公開日:2021/08/13
「女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は59歳女性の「独身女性でも老後のために医療保険は必要?」という疑問に、ファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんが回答します。
一人暮らしで、子どももおりません。
老後には不安がありますが、国民健康保険には高額療養費制度があります。
それでも、個人で医療保険に入る必要はあるでしょうか?
(59歳女性)
医療保険については、年金暮らしになってからも保険料を払い続けなければならないことを考えると、加入についておすすめしづらいのが本音です。
高額療養費の制度によって、入院したとしても治療費に関しては、数万円程度ですむ現実もあります。ただし、高額療養費は「健康保険の対象になる治療費のみを対象にしている」ことは知っておかれたほうがよいと思います。
例えば、がん治療で抗がん剤を使用する場合。最初の抗がん剤が健康保険の対象だったとしても、効果が薄かったり体質に合わなかったりして、健康保険の対象にならない自由診療の抗がん剤に変更するケースは少なくありません。
抗がん剤治療は3か月から6か月くらいを1クールとして、年単位の治療になる方もたくさんいますが、自由診療の抗がん剤を使う場合、毎月10~30万円くらいの費用が掛かり続ける可能性もあります。
そのような現実を受けて、健康保険の対象にならないがん治療についても、多くのがん保険では保障しています。がん保険の中には、抗がん剤治療に保障を絞って加入できる商品もあります。
抗がん剤を投与された場合は、健康保険の対象になるものもならないものも、治療が続いていれば月10万円や20万円などの保険金が受け取れる仕組みです。
抗がん剤治療に絞れば、ご質問者の年齢でも月に1000円~2000円程度の負担で加入できるがん保険があります。高額療養費の対象になるとは限らないので、治療期間も長引きがちな抗がん剤について、検討されてはいかがでしょうか。
もう一つ。一人暮らしでお子さんがいらっしゃらない方に知っておいていただきたいことがあります。入院する際の保証人や身元引受人の確保についてです。
以前のご相談者で、このようなケースがありました。
その方は公務員を定年で退職された60代のシングル女性で、ご両親は亡くなり、ご兄弟もいとこもおらず、天涯孤独の身でした。あるとき、具合が悪くなって救急車を呼んだところ、保証人がいないことを理由に救急車の中で6つの病院に受け入れを断られ、7つ目の病院でも「今回は特例として、入院を許可します」と言われたそうです。
無事に退院したものの次の入院が怖くなり「養子を取るのはどうか」と、私のところに相談にみえました。しかし、養子を取るにしても、認知症などになったときにお金を引き出されて、連絡が付かなくなるリスクがないとは言い切れません。
そこで、ご相談に対しては「入院時や施設入居時の保証人サービスを提供する会社が増えているので、安心をお金で手に入れてはいかがでしょうか。ただし、民間会社には倒産のリスクがありますので、顧客から預かったお金は信託銀行に分別管理をしているような堅実な会社を選ぶことをおすすめします」とアドバイスした経験があります。
コロナ禍の今は、入院するのがより難しい現実もあります。いざというときに、入院がスムーズにいくような事前準備についても、今のうちから検討しておくことをおすすめします。
はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』(近代セールス社刊)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。
■もっと知りたい■
連載「50代からの女性のための人生相談」では、専門家の方に相談したい内容を募集中です。下記応募フォームに、人間関係や老後の生き方、お金や介護、恋愛についてなど、相談したい内容を書いてお送りください。
この記事をマイページに保存