日本最古の名温泉街にひっそりとたたずむ小さな宿

おすすめの温泉宿|有馬温泉「花小宿」(兵庫県)

坂井 淳一
2018/12/18 3

港町・神戸から30分。六甲山を越えた先にある有馬温泉は、日本書紀にも記されている日本最古の温泉です。清少納言が『枕草子』に書き、与謝野晶子が歌に詠んだこの地にひっそりとたたずむ宿で、少しレトロで少しモダンな一夜を過ごしてみませんか?

有馬温泉 花小宿
【目次】
  1. 800年を超える温泉宿の伝統が凝縮
  2. 山海のご馳走が堪能できる有馬
  3. 驚きの炊き立てごはんの美味しさ
  4. 「ホテル 花小宿」への行き方(交通アクセス)

800年を超える温泉宿の伝統が凝縮

和と洋が折り重なる宿の空気

1191年。源頼朝が鎌倉に幕府を開いた1年前、有馬温泉に「湯口屋」という宿ができます。太閤秀吉によっていまの場所に移築され、創業来、有馬温泉を代表する宿として人気を保ち続けているのが名宿「御所坊」。その名宿が歴史と伝統におもねることなく、かつて有馬温泉にあった外国人用のホテルを偲んで開いたのが、わずか9室の「ホテル 花小宿」です。

蒋介石も愛したというその外国人用のホテルは、有馬の深い山の中に、第2次大戦前の異国情緒を湛えた港町・神戸の風が吹き抜けたような存在でした。「花小宿」は、そのようなホテルの良さと、800年を超える「御所坊」の伝統をぎゅっと凝縮したような宿です。

基本は、ベッド&ブレックファストのホテルスタイル。客室はどの部屋も、どこか懐かしく、どこか異国の匂いのする設えで、和室、洋室ともにベッドが備え付けられ、海外からのお客様にも、もちろんハルメク世代の女性にも優しい宿です。

窓のガラスにまでこだわり抜いた客室

部屋で少しくつろいだら、さあ、お楽しみの温泉へ。有馬温泉には、2種類のお湯があります。

ひとつは「金泉」と呼ばれるお湯。湧いたときは無色透明ですが、塩分と鉄分を豊富に含んだ含鉄塩化物泉で、空気に触れると酸化して赤く染まります。口に含むと、しょっぱさと同時に金属のような味がします。

もうひとつは「銀泉」。こちらは、無色透明の、あたりの柔らかい炭酸ラジウム混合低温泉です。源泉によって成分が異なり、かつては炭酸が強い源泉もあったそうです。その源泉を利用して炭酸せんべいを作ったり、サイダーを作ったそうです。有馬は日本のサイダー発祥の地とも言われているのです。今でも、当時の炭酸せんべいや、サイダーをイメージしたお土産が人気なのです。

「花小宿」の温泉は、「御所坊」の裏で湧き出た御所坊泉源のほか、妬(うわなり)泉源というふたつの金泉のお湯をブレンドして使っているそうです。妬泉源は近くに美人が来ると嫉妬で湯が赤くなり、ゴオゴオという音が鳴る、という言い伝えからつけられた名前だそうで、ハルメク読者のみなさんが行くと一層赤くなるかもしれませんね。

たった9室の宿ですから、宿の中には大浴場はありません。ふたつのこぢんまりとしたお風呂があります。「楓呂(かえでろ)」は、かつての外国人用ホテルにあったような五右衛門風呂です。

五右衛門風呂の「楓呂(かえでろ)」のタイル画

もうひとつの「蔦葉子(つたばす)」は、戦後間もない頃に描かれた人魚のタイル画があるお風呂で、今では描ける職人もいなくなった貴重なもの。どちらのお風呂も内鍵がかけられ、完全に貸し切りで使えます。

戦後すぐに作られた「蔦葉子(つたばす)」

このふたつの貸切風呂に加え「花小宿」に泊まると、歩いて8分ほどの場所にある御所坊のお風呂に入ることもできます。「金郷泉」と呼ぶ大浴場は、男女別ではあるものの、敷居が低く、声を掛けると会話ができるため、家族連れ等に大変好評なのだそうです。お湯は金泉・御所坊泉源と妬泉源からのもので、100%の源泉かけ流しです。さらには、温泉街には外湯もあるので、散策をしながら銀泉のお湯に入ってみるのも楽しいでしょう。

御所坊の大浴場「金郷泉」

山海のご馳走が堪能できる有馬

有馬は、古くから単なる湯治場ではなく、文化人や時の権力者も訪れた、いわば日本最古のリゾート地です。当然のように、食が発達しています。

例えば、近辺でたくさん生えていた山椒を使った料理に有馬煮など、土地の名前が付くことからも、その食文化の奥深さをうかがい知ることができます。有馬を囲んだ山の幸も豊富で、神戸や日本有数の漁獲量を誇る明石からも近く、海の幸も鮮度抜群です。そして山を降りれば豊かな地で作られた野菜や米、さらにはブランド牛神戸ビーフの産地でもあります。

「花小宿」を経営する「御所坊」は、明石浦漁港に出入りできる唯一の宿です。明石鯛をはじめ、瀬戸内の素晴らしい魚を直接買い付けてきます。また、神戸ビーフの中でも但馬玄にこだわることも見逃せません。そして何より、契約栽培する米や野菜を中心に使用します。「ご馳走」とは、美味しいものを食べていただくため、心を尽くすためにあちこちと飛び回っていい材料を集めることを言います。この宿は、まさに「ご馳走の宿」と呼ぶにふさわしいよりぬきの食材を揃えてくれるのです。

花小宿の食事処「料膳 旬重」

「花小宿」は、ベッド&ブレックファストのスタイルが基本ですから、有馬の街なかで食事を摂ることももちろんできます。けれど、この小さい宿には、小さい宿ならではの、宝石のように輝く食事処「料膳 旬重」があります。山家料理と銘打った料理の数々は、カウンターのみの旬重の空間の中、目の前で丁寧に作られる、本当に美味しい、食べたいと思えるものだけを出すスタイルです。日本旅館にありがちな、お仕着せの懐石ではなく、すべてが素朴でありながら洗練された、直球勝負の料理ばかりです。

もちろん、温泉同様、御所坊の食事処「餐房 閑」での食事も選択できます。カウンター鉄板で焼く神戸ビーフは、まさに神戸スタイル。また,御所坊のもう一つの宿「御所別墅」でいただく料理の人気も高く、宿を予約するときに何を食べるか迷ってしまいます。

景色も抜群の御所別墅の「レストラン」

 

驚きの炊き立てごはんの美味しさ

「花小宿」に泊まって何より楽しみなのは、実は朝食です。「料膳 旬重」でいただく朝ごはんは決して豪華ではないのですが、一品ひとしな、丁寧に、心をこめて作られています。カウンターのむこうに設えられた「おくどさん」と呼ぶ竈で、朝早くから炊き上げた熱々のご飯の美味しさと言ったら、ついついおかわりをしてしまうのです。この炊きたてのごはんは、夜も楽しめますが、朝の清々しい空気の中、シンプルできめ細やかに作られた惣菜でいただくと、お米の美味しさが一層際立ちます。

夕食、朝食ともにおくどさんで炊きたてのごはんを

「花小宿」のチェックアウト時間は、なんと12時。朝食の後、一眠りするもよし。もう一度極上のお湯に浸かるもよし、少し早く出て有馬の町並みを楽しむもよし、足を伸ばして神戸をぶらりとするもよし。たったの一泊の旅なのに、心づくしのもてなしと素晴らしい温泉で、有馬を離れるときには昨日とは違った自分になっていることに気づくことでしょう。

「ホテル 花小宿」への行き方(交通アクセス)

ホテル 花小宿

住所:〒651-1401 神戸市北区有馬町1007
電話:078-904-0281
交通:JR三ノ宮駅から有馬温泉行きバスで45分
   JR新幹線新神戸駅から高速バス有馬エクスプレス号で45分
   JR新神戸駅から電車乗り換え2回で有馬温泉駅まで30分
   ※駅やバス停より送迎あり チェックイン 15:00~18:00 チェックアウト:12:00
料金:1人17,200円~ (スタンダードプラン 1泊2食 1室2名利用の場合 税込) 


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坂井 淳一

「今日なにを呑む?」から始まる食事の新しいスタイルを提案する酒ごはん研究所主任研究員。ワイン、日本酒、本格焼酎やスピリッツ、カクテルとあらゆるお酒を研究している。料理はもちろん、旅行、アウトドアやIT、ガジェットなど幅広くカバーする。

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