飛鳥Ⅱ、にっぽん丸、ぱしふぃっくびいなすの違いは?

一泊のクルーズも!細やかなサービスの日本船に乗ろう

公開日:2018.11.25

更新日:2018.11.25

日本のクルーズを牽引してきた「飛鳥Ⅱ」などの日本船3隻。1泊1名4万円以上と、ちょっと料金的には高めですが、それに見合うさまざまなサービスや対応があります。外国船と違い、クリスマスクルーズなど1泊から乗船できるクルーズもあるのでぜひ体験を!

写真提供=藤原暢子

やっぱり乗りたい「飛鳥Ⅱ」は、クリスマスがねらい目!

日本が誇る、日本最大級の客船「飛鳥Ⅱ」(5万142トン/乗客定員872人/郵船クルーズ)。「3000万円のスイート客室で世界一周」とまではいかなくても、一度は乗ってみたい客船です。

白い船体が華やかさと上品さを醸し出している「飛鳥Ⅱ」

料金を考えると悩ましくなりますが、あきらめずにパンフレットや同社のホームページでコースを見てみましょう。意外にあるのが1泊クルーズなどの短いクルーズ。特にクリスマスなどは「ワンナイトクルーズ」が多いので、夕方乗船し、各所に置かれたクリスマスデコレーションを眺めると気分が盛り上がります。出航すれば陸の夜景自体が巨大なイルミネーションに! 

その後、クリスマスの特別ディナーを食べて、劇場でクリスマスらしい華やかなショーを見て、ちょっとバーなどでおしゃれに乾杯。翌日早めに船内を散歩したりして思い出を胸に下船。そう考えると、陸のレストランでフランス料理を食べて、素敵なホテルに泊まる金額とそう変わらないことがわかります。

「飛鳥Ⅱ」の魅力的は、日本船の中で最も華やかな施設。そして洗練された日本らしいおもてなし。吹き抜けの優雅なアトリウムのまわりにはバーがあり、上のフロアにはショップが4カ所。ブロードウエーのような外国人ダンサーたちによるオリジナルのショーを劇場で観ることができるのも、この船ならではです。

船の中心にあるアトリウムは2層の高さ。上にはカフェやショップが

 

この船に何百泊もしている重鎮もいますが、初めてでも、日本人のスタッフや客室、ウエイターをしているフィリピンクルーはとても親切。ちょっとお腹が空いたら、リドデッキでオリジナルのハンバーガーやホットドック、午後ならアフタヌーン・ティーのスイーツが好きなだけ食べられるのも魅力です。夜は夜食もあるので、短いクルーズでもぜひフルに楽しんでみてください。

本格的なラスベガス風のショーが観られるのは日本船では飛鳥Ⅱのみ

 

余裕があれば、客船では唯一「飛鳥Ⅱ」だけにある「AVEDA」のスパでトリートメントを受けるのもおすすめです。夜はおしゃれな「マリナーズ・ラウンジ」など、いくつかのバーをめぐってお気に入りのスポットを探してみましょう。

他の日本船もですが、1年を通して船はいろんなクルーズを行っています。日程や予算が合えば、訪ねてみたかった場所に寄港するクルーズにぜひ参加してみましょう。客船は夜、乗客が眠っている間に移動するので、陸からアクセスするよりもずっと楽に移動ができます。

『飛鳥Ⅱ』で注目すべきは「Aスタイルクルーズ」と呼ばれるもの。年に数回設定されますが、週末プラス祝日などを使って、参加しやすい2泊3日。予約ができないイタリア料理店「ラ・ベットラ」の落合務シェフなど有名なゲストシェフや、東儀秀樹さんなど有名なエンターテイナーが乗船し、クルーズ代金のみで有名シェフの料理や壮大なコンサートを気軽に体験できます。その他、大相撲や歌舞伎、文楽、宝塚などとコラボレーションしたクルーズもあります。それらのクルーズは観劇などだけでなく、日中に「歌舞伎体操」や「文楽教室」があったり、宝塚の衣装展示があったりして、各ゲストやテーマとぐっと身近に触れ合えるのが魅力です。

2019年春の予定ですと、「A-styleクルーズ~春彩~ 3日間 <2019年4月12日出発>」が発売中(※2018年11月現在)。横浜港発着、104,000円~524,000円で、ボサノヴァの第一人者、小野リサさんのスペシャルステージ、リストランテ「アクアパッツァ」の日髙良実シェフが乗船し、日本の食材の味と魅力を最大限に活かした評判のイタリアンを振舞います。また、ワインセミナー&テイスティングもあります。

おいしい食事、寄港地のユニークさなら、にっぽん丸がおすすめ

「飛鳥Ⅱ」の約半分の大きさの「にっぽん丸」(2万2472トン/乗客定員524人/商船三井客船)も日本を代表する客船です。「食のにっぽん丸」と言われるほど、食事がおいしいと言われています。船上で焼かれるパンも人気メニュー。同船のシェフが監修したカレーなど、お土産用に商品化されたものも買うことができるほどです。

「にっぽん丸」は、小回りの利く船体でユニークな港や島をめぐるコースが得意です。また、各地の花火大会を船上から眺められる花火クルーズやお祭りクルーズも人気。

今後は瀬戸内海クルーズにも力を入れていくというから楽しみです。さらに港に上陸すると、また凝った寄港地ツアーや歓迎を受けられるので、それも大人気。

ロイヤルブルーの船体に赤い煙突が目印の「にっぽん丸」

にっぽん丸が最初に行って話題になったのが「飛んで」シリーズ。東京から船で出航して、北海道や沖縄の島まで行くのは日数がかかるので、例えば北海道までは飛行機で行って、小樽港などから、利尻島、礼文島など、なかなか行けない島を短い期間でめぐります。沖縄や九州も飛行機で大きめの都市に飛んで、そこから南の島々や陸路では行きにくいコースをめぐるというクルーズが人気です。

「にっぽん丸」のスパはフランス・タルゴ社のスパブランド「テラケ」が入っていて、海を眺めながら、質の高いトリートメントが受けられます。山野愛子美容室もあるので、フォーマルナイトにはヘアセットを予約するのもよいですね。ネイルサロンもあります。

同船は数年前に大改装を行い、屋内プールに併設する「リドテラス」というカフェもあります。ここでもオリジナルのハンバーガーやスイーツなどが食べられます。もちろん、すべて無料。うれしいのが、ゴディバのチョコレートドリンク「ショコリキサー」も無料で飲むことができるので、いつも人気のエリアです。

プールサイドにある「リドテラス」は開放感いっぱいのカフェで大人気

「にっぽん丸」も「飛鳥Ⅱ」と同様、スイート客室用のダイニング(レストラン)がありますが、朝食や昼食は誰でも利用できるので、天気のよい日はスイート専用のダイニング「春日」で海を眺めつつ、食事ができます。

また、「飛鳥Ⅱ」「にっぽん丸」共に、寿司カウンター(有料)があるので、食前食後にちょっと寿司をつまんだり、「今日は、特別に夕食は握り!」ということも可能です。

 


気が向いた時に寿司をつまむことができる寿司バー「潮彩」。「飛鳥Ⅱ」には「海彦」という寿司カウンターを備えた和食レストランがある(ともに有料)。

とにかく寄港地や寄港地ツアーに凝っているので、個人の観光では体験できないことも「にっぽん丸」なら特別な経験ができることも多くあります。
 

緊張するなら、おすすめは「ぱしふぃっく びいなす」

唯一、本社が大阪にあるのが日本クルーズ客船の「ぱしふぃっく びいなす」(2万6594トン/乗客定員620人/日本クルーズ客船)。

船で働くスタッフには関西人が多く、関西からの乗客とのやりとりが聞えてくると、思わず大笑いしてしまう船です。もちろん、サービスなどもしっかりしていますが、日本人スタッフもフィリピン人クルーも、そして乗客の方も親しみやすいので、気が付くと、“ふれんどしっぷ”というのが「ぱしふぃっく びいなす」のキャッチフレーズになっています。日本船は乗客の年齢やクルーズ代金も高く、敷居が高そうという方は「ぱしふぃっく びいなす」から乗ると気が楽かもしれません。


さわやかな白い船体の「ぱしふぃっく びいなす」。親しみやすさが抜群な日本船

 

同船は他の船と同様にいろんな港からクルーズを行いますが、場所柄、神戸発着も多く、瀬戸内海の運航が得意。多島美やさまざまな橋を眺めながら、日本が誇る瀬戸内海をクルーズできるのは日本船ならではです。

ちょっと長めのクルーズなら「初めて乗る人の会」があったり、「出身地別の会」などを行ったりして、知らない乗客同士との出会いを忘れがたいものにしてくれます。また、同船ではカフェから売店、レストランが続いてあるので、ふと通路脇のソファに座ると他の乗客が「ここ座っていいかしら」と、世間話が始まることも。

 


白いピアノがある上の階が、誰もがついつい集まるフロア。ピアノ演奏の時間にはそれぞれ好きな場所で耳を傾ける

 

日本船のよさは、無料展望風呂と日本人好みの食!

日本船3船に共通するのが、無料の展望浴場。海を眺めつつ大きな湯船に入るのは格別です。バスタブがない客室でも展望浴場があれば一日の疲れを癒やしたり、朝日や夕日を眺めながらの入浴が叶います。


「ぱしふぃっく びいなす」の展望浴場。海や絶景の景色を眺めながら入浴できるのは日本船の良さ!

 

3船とも日本食と洋食をバランスよく出してくれ、味付けや量も日本人向け。どんなに長いクルーズでもほどよい量のおいしい料理が目と舌を楽しませてくれます。

 


クリスマスなどはフレンチのコースも出るが、通常は和洋食が交代にバランスよく出るのがうれしい

 

日本語での船内放送や船内新聞、寄港地ツアー、日本人の舌に合った食事を考えると、ちょっと高めのクルーズ代金も致し方ありません。どの船会社もそれぞれにオリジナリティーのあるコースや寄港地ツアー、船内イベントを行うので、日本人同士和気あいあい。

「いきなり外国客船はちょっと心配」という方は日本船から乗り始めるのもよいかもしれません。3船それぞれに個性や魅力があり、それを比べるのもまた“楽し”です。

日本船は外国船の日本発着クルーズと違って、クルーズの途中に外国に一度寄港しないといけないルールが適用されません。

ですから、日程も1泊から世界一周の約3カ月、また秋田のねぶた祭りと竿燈祭り、阿波踊りクルーズなどお祭りクルーズ、クリスマスや年末年始のクルーズなど、さまざまなバリエーションがありますので、ぜひパンフレットやインターネットでその豊富なコースの数々をチェックしてみてください。


実は日本船しかしない、このテープ投げのセレモニー。離岸する時に上手に飛ばすのはなかなか難しい!

 

また日本船でできるのが出港時の「テープ投げ」。移民船時代から始まりましたが、クルーズでテープ投げができるのは日本船だけ。クルーズの初め、もしくは見送りの多い港(離島など)ではテープ投げができて感動的です(紙テープは環境にやさしい素材でできているのと、ちゃんと港の方が収集してくれます)。


【関連リンク】
郵船クルーズ「飛鳥Ⅱ」
商船三井客船「にっぽん丸」
日本クルーズ客船「ぱしふぃっく びいなす」

 

【初めてのクルーズ旅の記事はこちら!】

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藤原 暢子

ふじわら・のぶこ クルーズ・ジャーナリストおよび編集者。20年間で100隻以上の外国船・日本船・フェリーに乗船し、80カ国以上を巡る。クルーズの老舗専門誌『クルーズ』編集長を務めた後、フリーのクルーズ・ジャーナリスト/編集者として、客船取材を含め、さまざまな媒体に関わっている。

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