氣の力で、心と体の安定を手に入れる(3)

合氣道家・藤平信一「マイナス思考を消す呼吸法」

雑誌「ハルメク」

私たち一人一人が、必ず持っている「氣」。氣の使い方を知ることは、日常生活のあらゆる場面や人間関係で、体と心を、疲れやストレスから遠ざけ、楽にしてくれます。心身統一合氣道の継承者、藤平信一さんに心が安定する「心の向き合い方」を教わります。

【目次】
  1. 過去や将来より、「今」に心を向けるために
  2. 不安を感じているときこそ、氣の呼吸法
  3. 王貞治さんも実践、マイナス思考を消す呼吸法
  4. 「今日が初めての日」と思って生きる

過去や将来より、「今」に心を向けるために

藤平信一さん
合氣道家・藤平信一さん

氣は、誰もが持っていて活用できるものなのですが、形のないものだけに、わかりづらいとお考えの方もおいでかもしれません。

しかし、やる氣に満ちた今のあなたが、まさに“氣が通っている”状態なのです。そうすると、なるほど氣とはこういうものか、と身近に感じていただけるのではないでしょうか。

私が代表を務める心身統一合氣道は、「心が身体を動かす」という氣の原理に基づき、人間本来の力を引き出すこと、相手の心を尊重して導くことを目的とした武道です。道場にはお子さんもいれば、普段は運動と縁のない方もいて、この「氣」を学び、身につけています。

そもそも、氣は大自然にあって、あなたと外界とを常に行き来しています(ちなみに私が「気」ではなく「氣」の字を使っているのは、「米」が八方に広がる形だからです)。その行き来が活発だと“元氣”になり、心は静まり、体は自然に安定します。

いつもこのような状態でいられたらいいですよね。しかし日常生活では、不自然な心の使い方や体の使い方をすることで、そうでいられなくなってしまう(氣が滞ってしまう)ことが多々あります。

氣の学びにおいては“氣が滞ったとき、いかにそれを解消するか”が大切なテーマであるのです。

不安を感じているときこそ、氣の呼吸法

不安を感じているときこそ、氣の呼吸法

では、普段、どのようなときに氣が滞るか。例えばそれは、不安を感じているときです。

「私はこのままでいいのだろうか」「将来の生活はどうなるのだろう」と考えたり、あるいは漠然と「なんだか不安」とおびえたり。

そうしたときに取り入れてほしいことが、氣の呼吸法です。リラックスした自然な姿勢で、はぁーと静かに息を吐き、そして静かに息を吸う。数度繰り返すと、氣が通うようになり心は静まります。心が静まると、今目の前のことに心が向き、周りがよく見えてきます。
 
そうすれば、不安への対処法もおのずと見えてくるはずです。「なぜ」不安に思うのか、「何に」とらわれているのかがわかって、漠とした不安は案外たいしたことではなかったり、本当の問題点や今やれることが見つかったりするものです。

また、あなたが一人ではなく、大自然と、また周囲の方々と共に生きていることに氣が付けます。不安の正体は、まだ起きていないことにとらわれることや、いつの間にか孤立感にさいなまれることです。氣の呼吸法をすると、そこから離れることができるのです。

氣の滞りは、カッとしたり、イライラしたりすることでも起こります。ともすると一日に何度もあるかもしれませんね。その都度、氣の呼吸法で(慣れてくれば、ひと呼吸でも)心をリセットする習慣を身につけましょう。

特におすすめするのは、寝る前。ぐっすり寝ることで「氣の補給」を行えますが、氣が滞ったまま寝ても十分に疲れはとれません。寝る前の氣の呼吸法で氣の滞りを解消すると、睡眠の質がよくなるのでお試しください。

王貞治さんも実践、マイナス思考を消す呼吸法

王貞治さんも実践、マイナス思考を消す呼吸法

氣の滞りを解消する呼吸法にはもう一つ、「ふっ」と短く吹く方法もあります。息を吹き切ることで「これでもう大丈夫、全部吹き飛んだ」と思えるスイッチを、自分の中に作っておくやり方です。

元読売ジャイアンツの王貞治さんは、現役時代、先代の藤平光一の元に通って氣を学び、これを体得しておられました。

素晴らしい記録と実績を築いた王さんですが、氣力や体力が衰えてくると、マイナスな考えが浮かんだそうです。そんなときは、打席に臨む前に「ふっ」と息を吹いて心の状態をリセットしたと聞きました。後年、「それでずいぶん助けられた」とおっしゃっていました。

現在は福岡ソフトバンクホークスの会長を務めながら、かつてのご自身と同じように氣力・体力に衰えが見える選手には、氣の呼吸法で心をリセットすることを教えていらっしゃるそうです。

「今日が初めての日」と思って生きる

「今日が初めての日」と思って生きる

私が先代の内弟子として教えを受けていた頃、先代はよく、修行について、また生き方についての話を私にしてくださいました。ある日、先代は私にこう言いました。

「おまえは私がいつも同じ話をするという顔をしている。大事な話だから毎回するのだぞ。もし、その話が同じように聞こえるのだとしたら、それはおまえの成長が止まっているのだ。おまえ自身が変化していない証拠だ」

同じような毎日も、周囲の環境はすべて違います。合わせて自分自身も変化しています。それゆえ同じ話でも聞こえ方が変わり、氣付きがあり、学びは深くなると教えられました。

これは日常生活にもいえることだと思います。仕事も家事も、実は毎日少しずつ変化しています。同じように見えても、実は一日一日が“初めての日”なのです。呼吸法で氣の滞りを解消し、心をリセットして向き合えば、その日の変化、自分の変化に氣付けます。
 
また、「こうしたら、うまくいった」という過去の成功体験を、仕事や暮らしにそのまま当てはめていることもあります。でもそれは、過去をなぞっているだけで、「今」に心を使えていません。これも氣を滞らせる一因です。

例えば車の運転で、「昨日はこの交差点で左右を確認して大丈夫だったから、今日は確認しなくていい」なんてことはあり得ませんね。それと同じです。

過去の成功体験も、生かし方です。“今日が初めての日”という向き合い方で心をリセットすれば、今日に最適な、今までの積み重ねに基づいた新たな氣付きを、見つけることができるでしょう。

取材・文=前田まき(編集部) 

※この記事は2018年2月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。


<合氣道家・藤平信一さんの関連記事>
VOL.1「姿勢を変えるだけで心身は整う」
VOL.2「氣の呼吸法で、心を静める」

 

 

藤平信一(とうへい・しんいち)さん
1973(昭和48)年、東京都生まれ。東京工業大学卒業。幼少期より心身統一合氣道の創始者である父・藤平光一の指導を受け、2007年に継承する。現在は24か国で学ぶ約3万人の指導のため国内外で活動中。経営者・リーダー・トップアスリート・アーティストなどを対象とした講習や企業向け研修も行う。主な著書に『心を静める』、広岡達朗、王貞治との共著『動じない。』(ともに幻冬舎刊)、『3秒「つま先立ち」で、疲れない体になる!』(主婦と生活社刊)他多数。最新刊は『コミュニケーションの原点は氣にあり!』(ワニ・ブックス刊)


心身統一合氣道会 
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