カメラ片手に、美しい自然と向き合いにいく旅物語

冬の道東一人旅(後編)

公開日:2018.10.07

国内旅行で巡った観光地や心に刻まれた風景を、撮影した写真とともに綴ります。今回は後編として、知床斜里、網走へひとり旅。「流氷ノロッコ号」、砕氷船「おーろら」、「網走監獄」等、訪れた先々で見た美しいシーンを紹介。

流氷
        ※イメージ

知床斜里駅へ

今日は旅の最終日、薄曇りの中ホテルから昨日と同じ路線バスで知床斜里駅に直行します。オホーツク海を右手に見ながらの道中、流氷の上にキタキツネの姿を見つけました。と思った瞬間キタキツネが体を弓なりにしてポンと跳びはね、流氷の間に顔を突っ込みます。エサでも見つけたのでしょうか、バスの中にも「わあっ」と歓声が上がります。

斜里から網走へ

知床斜里駅からは「流氷ノロッコ号」に乗ります。緑色の味わい深いディーゼル機関車です。残念なことにこの初代ノロッコ号は老朽化のため引退してしまい、現在は二代目が走っているようです。でもこの初代ノロッコ号の方がノスタルジックで私は好きです。

ノロッコ号は流氷原に沿って網走に向けて走ります。時々流氷の上に座り込むようにして何かをしている人がいますが、なんと流氷の下に棲息している「クリオネ」を捕っていると車内アナウンスがありました。想像も付かない採集方法に少しばかり驚きます。

初代「流氷ノロッコ号」
初代「流氷ノロッコ号」。

網走にて

網走では市内路線バス乗り放題のチケットを使い移動しました。まずは砕氷船へ。遠くアムール川からはるばる日本まで旅してきた流氷を、こうして間近で眺められるなんてとても不思議な気がします。

砕氷船「おーろら」
※イメージ(砕氷船「おーろら」)

昼食後、「網走監獄」に向かいましたが、この頃からちらほらと雪が舞い始めました。この監獄で過ごす厳しさは冬に訪れてこそ初めて分かる……そう思いました。恐らく暖をとるなど論外であろう獄舎、富国強兵策の元に求められた過酷な労働、この場所で北国の生い立ちがしっかり学べます。

 

その後「天都山(てんとざん)展望台」に向かいましたが、残念ながら展望は得られませんでした。網走駅に戻り、いよいよ帰りの飛行機に乗るため女満別(めまんべつ)空港へ向かいます。バスを待っていると、ふと町の流れ方がとても緩やかなことに気づきました。雪が降り始めて、人も車もとてもゆっくりと動いているのです。あわてることもなく、焦ることもなく、これが日常であると言わんばかりのスムーズな、そしてゆったりとした流れでした。

空港にて

空港で早めの夕食をすませましたが、降りしきる雪に私が搭乗する羽田からの飛行機が着陸できず、空港の上を旋回しているとのことです。同じ機に乗る方々と不安げに滑走路を見ていると、まるで涌き上がってきたかのように大小あわせて十数台の除雪車が、煌々とライトを点しなが除雪作業を始めました。

何度も何度も滑走路の上を往復し、薄紙をはぐように積もった雪が滑走路から取り除かれていきました。それは北国に暮らす人々のごく当たり前の日常であるかの如く、静かに整然と美しいまでの仕事ぶりでした。

終わりに

1時間後には機上の人となった私は、窓の外をすさまじいスピードで帯のように流れる雪をじっと眺めていました。と、突然音も何もない真っ暗な空間に飛行機ごとポーンと放り出され、一瞬心許ない感覚がただよったと思ったら、窓の外にはもう白い帯はありません。雪雲を抜けた瞬間でした。雲が途切れると、はるか下の大地には美しい光の道がどこまでも続いています。私の一人旅ももうすぐゴール、この光の道をずっとずっと辿った先に私の家族が待っています。

 

こすず

趣味は、読書(といっても多読、乱読)、旅をすること、写真、登山を含むアウトドアライフです。食べることへの興味も尽きない方で、旅先での食の探訪も結構好きです。少しでも長く趣味を楽しむために体力の温存を図るべく、夫と共に週4回ほどウォーキングとジョギングを行っています。

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