落語会体験記

落語自由自在14 ~板橋名人寄席~

公開日:2019.10.02

更新日:2019.09.30

落語が大好きなさいとうさんの落語体験記をお届けします。今回は、7月に開催された「板橋名人寄席」。今回も臨場感たっぷりのレポートです。

期待膨らむ4派の競演

落語四派・元年夏のえりぬき落語会「板橋名人寄席」に行ってきました。東京には 落語協会・落語芸術協会・五代目圓楽一門会・落語立川流の4派があります。普段は中々そろう事はないのですが、たまに顔を合わせると、それぞれが意識して競い合いますので、ことさら楽しい会となります。今日もそれを期待して開演を待ちます。

「稲川」 桂 夏丸 (落語芸術協会)

「芸協の代表は僕でいいの?」といきなり笑わせます。

「よく歌丸師匠のお弟子さんですか? って聞かれますが、残念ながら違うんです。幸いの丸と書く幸丸(ゆきまる)の弟子です。その大師匠が桂米丸です。現在噺家は東西合わせて900名程いますが、4月12日に94才になり、何と最高齢です」。会場からため息がもれます。子どもの頃から聞いていた米丸師匠が、今もお元気でご活躍されていているのですから、皆さん驚くやら嬉しいやらです。

「お相撲が好きで両国に住んでいます」と言ってから相撲取りの噺「稲川」に入ります。

これは元力士だった歌武蔵師匠がお得意で、何度も聞いている噺ですが、途中近所に相撲部屋があり、大関と横綱と真打が住んでいます、とストーリーから外れて町内の話をしたり、突如歌を歌い出して会場を戸惑わせます。中々筋に戻らず、脱線ばかりの「稲川」でした。

「片棒・改」 立川談笑 (落語立川流)

「片棒・改」 立川談笑

「オリンピックのチケット当たった方います?」

場内を見渡すと、チラホラ手があがります。「いるんですねぇ。」ため息をついてから「私は見事に、全部外れました。」おもむろに腕を組み「あのやり方も、下手ですよね。利口な人の集まりだと思っていましたが、利口な人が集まると、バカになってしまうんでしょうか?  ねぇ」で大爆笑。

「赤西屋けちべい」と言ったので、「片棒」だと分かりました。「どのくらいケチかって? 立川談志くらい」と言ってさらに笑いをとります。いきなりミッキーマウスが登場したり、ハチャメチャな「片棒」でした。終演後の演目に「片棒・改」となっていたのもうなずけました。

「夏泥」 三遊亭兼好 (五代目圓楽一門会)

「前半をご覧になってお分かりですね。芸協は変な奴です。立川流は悪い奴」。わぁっと笑いが起きます。「圓楽一門と協会はまともです」に大拍手です。

「元スリだった人が、エステティシャンになると手先が器用なだけに、上手でしょうねぇ」「よかったわ。今までお願いした中で一番よ。また、指名させていただくわね」「ありがとうございます」「おいくらかしら?」「あっ、もう頂きました」

場内われんばかりの拍手と笑いが起きます。
 
「夏泥」は橘家文蔵師匠のものが迫力満点で楽しいのですが、兼好師匠の泥棒は、如何にも人が良くて、また違った味で面白かったです。戸をあけるシーンの描写が丁寧で、息詰まる感じがよく描かれていて、思わず泥棒の気持ちになってしまいました。

「品川心中」 柳家喬太郎 (落語協会)

「品川心中」 柳家喬太郎 

「梅雨らしい鬱陶しい毎日です。こんな時は、大勢の前で一席やろうなんて気には、とてもなれません」。笑いが弾けます。

「それにしても平成最後のって言葉、飽きる程聞きましたね。本来ならそんな事言えないはずですよ。昭和最後なんて言ったら、あの時はえらい事でした。天皇陛下が病で苦しんでいる最中でしたからね。つまり今回は生前贈与だから、明るく言えたんですよ。木久扇師匠が木久蔵の名を息子にあげましたね。あれと同じです」

場内、シーン。「あれ、例が悪かったかな? 皆さん納得していませんね。違いましたね。例が悪かったです」。師匠、静まり返った場内を見渡してから「品川心中」に入ります。喬太郎師匠が演ずるこの噺は3回目ですが、いつも前半で終わってしまい、最後まで聞いたことがありません。今日こそおしまいまでと思い時計を見たら、もうすでに持ち時間が15分を切っています。これは無理かな? 無理でした。3度目の正直はならず、またもや前半でお時間となりました。

四派四様、予想通り弾けて楽しい会でした。

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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