自称「オタクな主婦」が、漫画について語ります

キャラの名前で僕を呼ぶの?

公開日:2019.04.28

リアルタイムで手塚治虫を読み東映作品を見て育ち、累計鑑賞本数は1500本以上。「漫画・映画・アニメは私にとって酸素のようなもの」と語るK・やすなさんが溢れる漫画愛をつづります。今回はキラキラネームについて考えます。

名は体を表す? それとも、名前負け?

新しい元号、新しい年度になり、新たな出会いの季節になりました。

それはまた、たくさんの名前と出会う機会でもあります。

今回は、漫画と名前の関わりやいわゆるキラキラネームなどについて考えてみました。 

私が会社員の頃の話です。当時の仕事場では茶菓代を集めて、架空名義の通帳に入れていました。現在ほど預金者名義のチェックが厳しくない時代でした。

入り用のときは、その通帳から当番が必要な金額をおろしに行きます。
 
ある日私の番がきました。窓口で呼ばれた名前が

「ヨシナガサユリ様ぁ!!」

周囲の人の目が一斉に窓口に注がれました。かれこれ40年前ですからねぇ、それは当然のこと。

私は心の中で『何の罰ゲームだあ』と叫びながら、小さく返事をしてお金を受け取りに行きました。

人々の失望の空気を感じながら銀行を出るまでの時間が、とても長かったことは今でも忘れられません。

『みなさま、こんな私ですみません』

この時は一時の恥(笑)で済みましたが、注目される名前で常に苦労している方もいらっしゃるでしょうね。

名前は親からの『初めての贈り物』なのですが……

先日、「王子様」という名前の男性の改名申請が認められたというニュースが報じられて、改めてキラキラネームが注目されました。

「黄熊」と書いて「ぷー」とか、「光宙」で「ピカチュウ」などはよく知られている例です。

検索すると驚くような名前がたくさん出てきます。

同時に、自分のキラキラネームを嘆くサイトも見つかるでしょう。

中には、普通の名前でも「麗」や「美」が入っているので嫌だという人も。
 
未成年でも改名申請ができるという今回の報道は、自分の名前で苦労している子どもたちには朗報だと思います。

但し、キラキラ度が「悪魔くん」レベルでないと通らないようですが。

この贈り物は、受け取る側に拒否権がないし相談もできません。プロポーズの指輪には、必殺技「ごめんなさい」がありますが、そうはいきません。

贈る側から考えると難易度最高です。 

私はカッコイイ名前思いつかなくて、地味ネームな我が子らからは、直接の苦情はないけれど、我慢しているのかしら。

あ、ひとり「一発変換できないので面倒くさい」と言ってたわ。ごめんなさい。

名前に込められた思い

携帯電話のCMで、新生児を抱いた母親が、命名の際に「名前にいろいろ込めなくていいのよ」

と言う場面がありました。

これもまたひとつの考え方です。イチロー(引退したので鈴木一郎氏?)のように名前を輝かせるのは、本人の生き方次第だと思います。
 
ですが、多くの人は我が子の幸せを願って名前をつけるのではないでしょうか。

「あやかる」という言葉がありますね。

偉人や有名人や漫画・アニメのキャラクターから名付ける人は、彼や彼女の持っている良い所や業績に共感していると思います。
 
『BLEACH』を週刊誌で読んだとき、欄外のお便りコーナーの「子どもに一護(いちご)と名付けました」という投書が記憶に残っています。一護は、『BLEACH』の主人公で、かりん、ゆずという双子の妹がいます。

フルーツ由来で、もとはいちご→苺でしょう。よく考えつきますね!

知人に、宮崎駿のアニメの主人公の名前をつけた人がいます。

正義感にあふれ元気でがんばり屋のキャラクターです。

そこまで考えずに、単にかわいいとかかっこいいからという人もいるでしょうが、動機は人それぞれなので、それもありですね。
 

BLEACH
連載開始当時はこんな顔だったのに、終了近くにはこんなにイケメンに(笑)

『蓮くん』登場!

「蓮くん」みなさまのお近くにいらっしゃいませんか?

明治安田生命の『生まれ年別名前調査』によれば、1999年に9位で初登場して以来ベストテンの常連です。昨年を含めて、1位は5回、10位以下は2回しかありません。

一音節で呼びやすい、外国人も発音しやすい、しかも蓮の花…ということで、ピカチュウに難色を示す、上の世代の対策もO,Kな蓮くん、最強です。
 
しかし、何でも漫画を引き合いに出す私のアンテナが反応いたしました!

『NANA』という漫画はご存じでしょうか。

実写映画も2本製作され、劇中の歌が大ヒットしました。

ミュージシャンとしての成功を求める天涯孤独の「ナナ」と、恋人と同棲するために上京する「奈々」が、新幹線の中で偶然出会って始まる物語です。

二人のNANAの生き方を軸に、バンドのメンバーなどの様々な人々との、愛・友情・挫折などがセンス抜群のファッションや音楽シーンと共に描かれています。
 
「ナナ」の恋人で同じミュージシャンなのが、「蓮」なのです。『NANA』の発表が1999年で、その年に「蓮くん」初登場です。それ以前は圏外でした。以降は、この章の始めに書いたとおりです。名付けようとしても、子どもがいないと不可能です。

漫画を読んで感動した少女たちが母になって、憧れの人の名前を付けた人もいるのでは…と想像(or妄想?)する私です。

だけど、漫画の「蓮」の人生はなかなかハードです。
 

NANA
NANA

ついでながら、「翼くん」にも触れておきます。

これも明らかに漫画『キャプテン翼』の影響が大きいでしょう。

初登場は1993年5位です。そこから2006年までは連続ベストテン入りです。

漫画の連載は1981~1988年と案外短いのですが、日本だけでなく世界中のサッカー少年を虜にしたのは、みなさまもご存じの通りです。

データを見ての私の感想ですが、「蓮くん」に取って代わられたみたいですね。

でも「大空翼くん」は現在スペイン名門チームでがんばっていますよ!

名前を呼び合う幸せ

一方、名前を聞いて悲しくなることもあります。

それは虐待行為で幼くして亡くなる子どもたちのニュースを見聞きするときです。

私では思いつかないような素敵な名前の子どもたちが多いように思います。

命を授かったときに、どのような思いで名前をプレゼントしたのでしょう。

どんな理由で、優しく名を呼ぶ声が怒声に変わっていったのでしょうか。
 
新元号も決まり、家から出るとあちこちの路地で子どもたちが遊んでいた昭和も遠くなりました。

少子化を嘆くなら、生まれてくる子どもたちを社会全体で温かく見守り育てる仕組みを整え、きちんと機能するようにしてほしいです。

お節介なばあさんじいさんたちも、及ばずながら力をお貸ししますから。

「おばあちゃん」と呼ばれるのは不本意ながら、次の世代が育っていることの喜びでもあります。

 

おまけ 映画『君の名前で僕を呼んで』をご覧になりましたか?」

君の名前で僕を呼んで

今回のタイトルはこちらから取りました。

いつも、ひとりよがりのパロディですべっております。

父親が大学教授でイタリア人の高校生エリオと、助手をするためにアメリカから来た大学院生オリヴァーの、青年二人のひと夏の恋の物語です。キワモノではなく、北イタリアの季節折々の風景の中で、反発しあいながらも惹かれていく二人と、偏見のない魅力的な両親の描写は、心に響くものでした。

このような世界は少女漫画の得意分野ではないでしょうか。

ポーの一族の頃の萩尾望都(はぎお・もと)の絵で、漫画版を読みたいと思いながら映画を見ていました。

最近、高校生役のティモシー・シャラメ君の主演映画が公開されたので、そちらが気に入った方はこの作品も機会があればぜひご覧ください。
 
本日の作品
『BLEACH』久保帯人 集英社 2001年~2016年 全74巻
『NANA』矢沢あい 集英社 1999年~ 21巻~ 作者急病(病名非公表)のため休載中。映画・CD・ゲーム・アニメなど関連作品多数
『キャプテン翼ライジングサン』高橋洋一 集英社 2014年~ 既刊10巻
映画『君の名前で僕を呼んで』2017年 イタリア他製作 ファントムフィルム配給 PG12指定
 
 
次回予告
唐津一人旅
漫画を捨てよ町に出ようーーーでも…たどり着いても漫画の館

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