車いすジャーニー~ゆっくり歩けば遠くまで行ける~

第4回「退院したら沖縄に!」。車いすで初めての旅へ

岸田 ひろ実
2018/09/26 29

車いすユーザーとして自身の視点や経験を生かし、全国各地で”ユニバーサルマナー”を伝えている岸田ひろ実さん。 今回は、車いすユーザーになって初めて訪れた、沖縄旅行を振り返ります。不安を抱く母娘を待っていたのは、うれしい後悔でした。

2014年10月 車いすユーザーになって2度目の沖縄。バリアフリーのかりゆしビーチにて
【目次】
  1. 旅行に行くと決めて、できることへ目を向けた
  2. もっと早く行けばよかった、うれしい後悔
  3. 誰もが行きたい場所へ行けるための情報

旅行に行くと決めて、できることへ目を向けた

2018年のゴールデンウィークは、娘と沖縄へ行きました。私たち母娘にとって、沖縄はもう何度も訪れている特別な場所です。

子どもたちが幼い頃から、我が家の夏休みの行事といえば沖縄旅行でした。南の島が好きだとか、暖かい気候が好きだとか、なんてことのない理由です。

しかし、子どもが大きくなり、いろいろと段取りをしてくれた夫が亡くなってからは、旅行はパッタリ途絶えてしまいました。また暇な時に行ければいいね、と言い合うぐらいでした。

2008年、私が病気で倒れ、歩けなくなり、自暴自棄になっていた頃。いつでもできると思っていた旅行は、もう二度とできなくなってしまんだと気づきました。歩けない、一人で車いすをこげない、そんな私は沖縄なんてもういけない。そう考え、落ち込んでいました。

絶望のドン底にいた私を見かねて「退院したら、沖縄に行こう」と誘ってくれたのは、娘でした。すてきな響きでしたが、まさか本当に行けるとは思いませんでした。

それでも、娘が言うのだから、少しでも可能性を探ってみることにしました。どうすれば沖縄に行けるだろうかと考えると、沈んでいた気持ちが少しずつ明るく、変わっていきました。失くしたものに悲しむのではなく、できることに目を向けるべきだと気づいたのもこの頃です。

まずは、体調を整えて元気になろう。つらいリハビリを終えて、一人でできることを増やそう。

初めて前向きになれたことが、いくつも見つかりました。

もっと早く行けばよかった、うれしい後悔

2011年10月、娘と二人、初めての沖縄。

 

歩けなくなってから1年後、私はついに沖縄へ行けることになりました。車いすに乗って、初めての旅行です。最初は、飛行機に乗れるのか、ホテルで困らないか、街中で立ち往生しないか、たくさんの不安がありました。

しかし、いざ那覇空港へ着いてしまえば、印象は180度好転しました。

空港はバリアフリーが整っていて、あっという間に到着ゲートをくぐりました。ドキドキしながらタクシーを待っていると、乗務員さんが「ゆっくり乗りましょうね~」と独特のイントネーションで優しく迎えてくれました。

娘も旅行の前は不安だったようで、ホテルや観光地へ電話をしていてくれたようです。娘が「いちばん丁寧にお部屋のバリアフリーのことを教えてくれた」というリゾートホテルの客室は、何の問題もないくらい設備が整っていて、フラットな動線で露天風呂にまで入ることができました。

ビーチまでバリアフリー化されていることには、驚きました。
砂浜の一部にマットが敷いてあって、車いすが砂で沈まず、波打ち際まで行けるようになっているのです。
 

グラスボートから車いすを担いでおろしてもらいました。

 

段差のあるグラスボートに「楽しんでってね~」と、これまた独特のイントネーションで力強く車いすごと持ちあげてくれたお兄さんがいました。船から見る色とりどりの魚と海の美しさは、今でも忘れません。

「もっと早く来ればよかった!」と、うれしい後悔をしました。

 

誰もが行きたい場所へ行けるための情報

2018年5月 沖縄県名護市で見つけた可愛いシーサー

後から、地元の人に教えてもらったことがあります。沖縄には「ゆいまーる(助け合う)」という精神が人々の心に根付いています。たとえ段差や階段があったとしても、手慣れた様子で近くにいる人たちが車いすを運んでくれるそうです。
この感動は、実際に行かなければわかりません。

私のように、旅行に対して、多くの不安を抱え、二の足を踏んでいる人は多いと思います。それは「知らない」「わからない」ことが、バリアになっています。
車いすに乗る私の「こんなところに行けた!」「楽しかった!」という思いを、情報を、多くの人に知っていただきたいと思っています。

 

2017年11月の頃に石垣島の離島、竹富島への旅行。観光地までは昇降機のついたユニバーサルデザインの送迎車を無料で利用できます。

 

同じ立場の人の情報は、勇気へ変わります。

こんな経験をもとに、弊社では、Bmaps(ビーマップ)というバリアフリー地図アプリも開発しました。


このアプリをインストールすれば、宿泊施設や飲食店などの、バリアフリー情報を投稿・検索できます。障害者や高齢者、ベビーカー利用者など、多様なユーザーにとって役立つ17の項目(エレベーター、オストメイト対応トイレ、Wi-Fiなど)が記載されているので、「行きたい場所」に「行けるのかどうか」を誰もが手軽に調べられるのです。また、訪れた店の情報をみんなで投稿することで、情報がどんどん集まり詳しくなっていく仕組みになっています。

 

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SNS、講演、アプリ、そしてこのコラムなど、さまざまな場所で、誰かの「行けた!」が、みんなの「行けた!」に変わることを願っています。

次回は、「第5回 車いすだと不便な新幹線が大好きな2つの理由」。新幹線での車いす利用について語ります。

 

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岸田 ひろ実

きしだ・ひろみ 1968(昭和43)年大阪市生まれ。日本ユニバーサルマナー協会理事。株式会社ミライロで講師を務める。27歳、知的障害のある長男の出産、37歳夫の突然死、40歳、病気の後遺症で車いすの生活に。自身の経験から、人生の困難や障害との向き合い方を伝える。

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