全線開通の三陸鉄道で東北応援旅!(前編)

三陸鉄道で東北応援旅!リアス線乗り通しは盛から

公開日:2019.07.15

大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、気軽に行ける1泊2日の女性ひとり旅をご紹介。今回は、東日本大震災から8年、3月に全線開通をしたばかりの復興のシンボル・三陸鉄道リアス線に乗って岩手県を横断します。

旅の始まりは、東京駅で「平泉うにごはん」を購入

岩手県の三陸海岸沿いを走る三陸鉄道は、もともと宮古ー久慈間の北リアス線と、盛ー釜石間の南リアス線の2つの路線として営業していました。その間の宮古ー釜石区間はJR東日本山田線の一部でしたが、震災により不通となっていました。

その部分がこの度三陸鉄道に移管され、2019年3月23日、盛ー久慈間をつなぐ1本の路線「三陸鉄 道リアス線」として生まれ変わりました。

これは日本の第3セクターとしては最長となる鉄道路線。

盛—久慈間の全線を乗り通せる列車は上り3本、下りが2本。全線乗り通すと4時間半かかりますが、今回はちょうど真ん中にあたる宮古駅で1泊する、2日間の旅に出かけます。

「平泉うにごはん」に付属された短いお箸は、木の部分を引っ張り出すと倍に伸びる

まずは東京駅の駅弁屋・祭 で、一ノ関の駅弁屋「しょう月堂」の「平泉うにごはん」を購入。

これから東北新幹線・やまびこで一ノ関駅に向かうので、本当なら現地で買いたいところ。しかし乗り換え時間がないのと、そこまでの空腹に耐えられず、気持ちだけでも……とあえて一ノ関から輸送されたこちらの駅弁を選びました。

駅弁は朝から一ノ関―東京間を往復旅したことになりますね。
 

見逃しに注意!バスから見られる「奇跡の一本松」

一ノ関駅。JR大船渡線は線路の形からドラゴンレールと呼ばれている
一ノ関駅。JR大船渡線は線路の形からドラゴンレールと呼ばれている

ここからはJR大船渡線に乗り換えて気仙沼まで向かいます。大船渡線は一ノ関〜盛間を結ぶ路線ですが、東日本大震災で津波の被害を受け、鉄道は不通に。その後、2013年3月から気仙沼-盛間はBRTというバス高速輸送システムで運行されるようになりました。この区間は青春18きっぷも使用できます。

気仙沼駅。鉄道が走っていた跡があちらこちらに残る
気仙沼駅。鉄道が走っていた跡があちらこちらに残る

気仙沼からBRTに乗車。奇跡の一本松駅、陸前高田駅などを通って盛駅まで向かいます。他、いくつかの駅に停まりますが、地元の方が数人乗り降りするくらいで、観光客はほぼ終点・盛駅まで行くようです。

スマホのGoogle Mapで位置確認
スマホのGoogle Mapで位置確認

バスでの走行は、鉄道に比べて現在地の場所を見失うことが多いです。そういう時に便利なのはGoogle Map。ただし電波が入る場所に限ります。

車窓から見える「奇跡の一本松」
車窓から見える「奇跡の一本松」

テレビなどで一時期話題になった「奇跡の一本松」。震災前、ここは7万本もの松が植わっていた松林でした。震災時の津波で全て流されましたが、1本だけ残った松の木。それが「奇跡の1本松」と呼ばれるようになりました。

その素晴らしい生命力に誰もが勇気づけられましたが、その後、松は枯れてしまい、今ある物はモニュメントだそう。奥に見えるのは陸前高田ユースホステルだった建物。現在、震災遺構としてこの辺一帯を復興記念公園にするため整備が進んでいます。

横並びに建つJR盛駅と三陸鉄道 盛駅
横並びに建つJR盛駅と三陸鉄道 盛駅

朝の駅弁が軽めだったので、盛に到着する頃にはお腹が空きました。楽しみにしていた盛駅から徒歩3分の「THE BURGER HEARTS (ザ バーガーハーツ)というお店に向かいます。

THE BURGER HEARTS の「恋し浜帆立バーガー」ランチセット
THE BURGER HEARTS の「恋し浜帆立バーガー」ランチセット

基本、いわて短角和牛100%パティのハンバーガーのお店ですが、その中で選んだのは肉ではなく恋し浜のブラント帆立を使った「恋し浜帆立バーガー」。この高さ、どうやって食べるのか躊躇していたら、テーブルにある袋に入れて食べるよう。大きな帆立貝柱丸1個が入ったクリームコロッケとキャベツ、自家製タルタルソースと共に甘みのあるバンズをかじると、口いっぱいに幸せが……これはおいしい! 大きいですが、クリームコロッケなので全く重くありません。持ち帰りもできます。

三陸鉄道に乗車。復興のうれしさがこみ上げる

三陸鉄道 盛駅からいよいよ三陸鉄道に乗車
三陸鉄道 盛駅からいよいよ三陸鉄道に乗車

北リアス線は何度も乗っていましたが、実は元南リアス線の盛駅から乗車するのは初めて。震災から2年後、北リアス線も南リアス線もまだ一部運行のみで、なかなか先に進めなかった頃、釜石ー田野畑間は一人でレンタカーを借りて回りました。しかし何も無く広がる景色を前に言葉が出ませんでした。

三陸鉄道の基本のカラーリングの車両
三陸鉄道の基本のカラーリングの車両

かなりの被害を受けたにも関わらず、三陸鉄道は震災5日後に一部区間の運行を再開しています。記事やニュースで見て、鉄道路線と人の素晴らしいパワーに感銘を受けた人も多いはず。私自身も以後、意識して毎年のように現地に訪れるようになりました。

新車両の車内。ボックス席と一部ロングシートがある
新車両の車内。ボックス席と一部ロングシートがある

冬のこたつ列車など、楽しい企画列車もいろいろある三陸鉄道。基本の車内はボックス席と一部ロングシート。車両によってボックス席にテーブルがあるものとないものがあります。

車内に設置されたお手洗いと自動販売機
車内に設置されたお手洗いと自動販売機

お手洗いは車両に設置されています。自販機がある車両は現在4両とのこと。もし4時間半乗り通す場合は、事前に飲み物も買って乗った方が良いかもしれません。私も今度来る時は、お酒とおつまみを買って乗り通すつもりです。

ちなみに盛—釜石間は1時間足らずの乗車です。

線路が続いているのは当たり前ではないことを噛み締める)(13-2写真・車内の鏡に映った自分を自撮り
(左)線路が続いているのは当たり前ではないことを噛み締める(右)車内の鏡に映った自分を自撮り

列車は盛駅を出発。この日は土曜日だったため、たくさんの人が乗っていました。3月に三陸リアス線として開通してから、観光客が大勢、三陸鉄道に訪れるようになったそう。

座ってじっと車窓を眺める方がほとんどでしたが、私は乗れたうれしさと全線開通したうれしさで、ほぼ座らず写真を撮りまくっていました。
 

2009年に「小石浜駅」から「恋し浜駅」に改名
2009年に「小石浜駅」から「恋し浜駅」に改名

昼11時〜15時台の、盛発の便3本と釜石発の2本は、恋し浜駅で3分間停車します。その間にぜひホームに出てみましょう。先ほど食べたハンバーガーの「恋し浜ホタテ」はこちらの漁協のブランドホタテです。

 

恋し浜駅の駅舎内はホタテ絵馬でびっしり
恋し浜駅の駅舎内はホタテ絵馬でびっしり

恋し浜駅は恋愛の聖地としても有名。ホタテの貝殻にメッセージを書いて絵馬として奉納すれば願いが叶うかも。駅舎内にペンも置いてあります。3分だと大急ぎで書かなくてはなりませんが、恋し浜ホタテデッキなど、ショップやホタテ養殖見学ツアーもあるので、下車してのんびりするのもいいですね。

ホームからの景色
ホームからの景色

ホームからは小石浜の集落と越喜来湾、海の向こうに越喜来半島が見えます。晴れた日は海と空の青色がさらに映えます。旅した時は、梅雨真っ只中。雨が降っていないだけよかったです。

雨の釜石大観音は、歓迎のサイン……?

釜石駅
三陸鉄道 釜石駅

釜石駅に到着しました。イオンタウン釜石駅という駅名看板は、5年前に釜石にイオンが出店した際に付けられたもの。宮古在住の方にお話を伺ったところ「釜石にイオンができてとても便利になった。買い物に行くのが楽しい」とのことでした。

遠くに見える釜石大観音の後ろ姿)(18-2写真・釜石大観音内部構造
(左)遠くに見える釜石大観音の後ろ姿(右)釜石大観音内部構造

さて、釜石からバスで目指すは釜石大観音。私が巨大仏や大観音好きなのは何度か書いていますが、釜石大観音も震災後、レンタカーで訪れていました。しかしその時は建造物自体にヒビが入り危険、と中に入ることはできませんでした。

ですので今回、内部見学を楽しみにしていたのです。最寄りのバス停「観音入口」からは、遠くに釜石大観音が見えます。本当にここから10分で歩いて行けるのか、にわかに不安になりました。そして不穏な雨雲が……。

(左) 魚藍観音 釜石大観音(右)千葉県富津市にある東京湾大観音) 
(左) 魚藍観音 釜石大観音(右)千葉県富津市にある東京湾大観音

途中で出会った方に道を確認しつつ、参道を進むと入り口が見えてきました。敷地内には大観音へ続く長いエスカレーターがありました。江ノ島にある江の島エスカーとほぼ同じです。これなら楽に長い坂道を登れます。安心しました。

ようやく中に入ることができた釜石大観音。前回、東京湾ぐるり旅編でフェリーから見えるとご紹介した、東京湾大観音とよく似ています。実はこの2つは作者が同じ。共に海を向き、行き交う船や人を見守っています。

釜石大観音が抱えているのは魚です。その上がちょうど展望台になっています。

海抜120mの展望台から見た景色
海抜120mの展望台から見た景色

しかし私が釜石観音に着いた途端、大雨が降り出しました。神社で雨が降るのは神様が歓迎してくれるサイン、と聞いたことがありますが、お寺での大雨は、果たして……?

新華園本店の釜石ラーメンとふかひれ餃子
新華園本店の釜石ラーメンとふかひれ餃子

さて、帰りはバス停まで歩きます。大雨の中、今度はバスで「市民ホール前」で下車。すぐ目の前の新華園本店で釜石ラーメンをいただきます。

透き通ったスープはやさしい醤油味で、極細の縮れ麺とよく合います。好きな味です。麺は少しやわらかめ。隣の方が「麺固めで」と注文していました。今度はそう頼んでみよう。

宮古駅で三陸鉄道のお土産をチェック!

宮古駅に到着
宮古駅に到着

釜石から宮古駅へ着く頃には雨は上がりました。まだ久慈行きはありますが、今日はこちらで一泊し、翌朝早くから観光する予定です。早めの夕飯でお腹が空きそうですが、釜石駅で買っておいた三鉄せんべい類と宮古のコンビニでビールを買って、軽い夜食とすることにしました。

 (左) 三鉄赤字せんべい(右)クロジカせんべい塩味・醤油味
(左) 三鉄赤字せんべい(右)クロジカせんべい塩味・醤油味

「クロジカせんべい」は新発売の商品。以前からある甘めの味の「三鉄赤字せんべい」もおすすめです。宮古駅にある「さんてつや」には三陸鉄道のグッズやお菓子など、たくさん揃っています。ぜひ寄ってみてください。

1日めのルートはこちら!
1日めのルートはこちら!

観光やお土産でお金を使うのも、現地を応援することにつながると思います。気に入ったら、ぜひ何度でも遊びに行きたいですね。
 

次回は後編、宮古駅から終点 久慈駅まで向かいます。

 

前回の「千葉と神奈川の名産をペロリ。東京湾ぐるり旅(前編)」を読む

☆本記事に記載されている写真や本文の無断使用・ 無断転載を禁じます。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。


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YASCORN

駅弁・駅そばが好きな鉄道好き漫画家&文筆家。温泉ソムリエ。児童誌から鉄道誌まで幅広く活動中。著書に「おんな鉄道ひとり旅」(小学館・プチコミック増刊で連載中)、「メシ鉄!!!」電子書籍1〜3巻(集英社)他。「鉄道漫遊記」を東洋経済オンラインで連載中。HP: yascorn.com

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