自分の体を守る、女性ホルモンの知識と健康スキル

【更年期】女性ホルモン量が心身の健康を左右する

対馬ルリ子
監修者
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 院長
対馬ルリ子

公開日:2018.07.02

更新日:2023.07.16

「性差医療」をご存じですか? 実は日本は欧米に比べ、女性のための医療が不十分。また、健康になるための知識と行動についても周知されていません。女性が健康で幸せに生きるために欠かせない、女性ホルモンについて正しく理解することが大切です。

女性ための「性差医療」とは?

日本は世界的に見ても最先端の医療技術をもち、国民皆保険で誰もが等しく医療を受けられる制度も充実しています。しかし一方で、他の先進国から大きく後れを取っている部分もあります。その一つが「性差医療」で、特に女性のための医療はたいへん遅れています。

例えば、勤務先や自治体を中心に行われていれる健康診断やメタボ健診は、男性には有意義な検査です。高血圧や糖尿病といった男性に多い病気は生活習慣の影響が大きく、こうした健診で早期発見できるからです。

ところが女性は違います。生活習慣病の心配が必要なのは更年期以降で、その場合も男性とは原因が異なります。更年期を境にコレステロール値が高くなるのは女性ホルモンの材料にコレステロールが使われなくなるためで、生活習慣が主因ではありません。こうした女性のための性差医療の知識をもち、患者さんに説明できる医師はほとんどいません。

男性と女性では、メタボの危険性は大きな差があります。 平成26年厚生労働省「国民健康・栄養調査」より

また、女性にとって重要な女性ホルモンや甲状腺ホルモンなどのホルモン検査は、通常の健康診断ではまず行われていません。そのせいで、女性はホルモンの大切さを知ることなく過ごしてしまうのです。

これと関連して、日本では「リプロダクティブ・ヘルス」、つまり妊娠・出産に関する知識の啓蒙も不十分です。10代の女の子は月経を迎えたら婦人科や学校で、女性ホルモンや女性の体の仕組みをきちんと理解すべきなのですが、日本ではそうした機会をもたないまま、大人になる女性がとても多いのです。

現在日本では晩婚化が進み、30代や40代での妊娠・出産を希望する人も増えています。しかし、正しい知識をもち、10代、20代の頃からその準備をしている人は非常にまれです。

そのうえ女性に対し、「男性と同等に働いて社会参加を!」とか「子どもをもっと産もう」「育児もがんばって」「介護も任せた」「介護されないように気をつけよう」などと、過剰な期待と責任を押しつけられているのが現状です。こうしたストレスに満ちた状況の中、自分の心と体を守る術を知らず、何の手も打たないままでは女性が健康や自信を失うばかりです。

更年期は自分の心と体を見直すチャンス

自分自身の健康を守るスキルと知識は、一気に身につくものではありません。例えるなら小さな苗木を育てるように、時間と手間をかけながら身につけていくしかないのです。

健康の木:対馬ルリ子さん原画(2004年)

「もう更年期だし、今さら遅いのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。日本女性は世界でもトップクラスの長寿を誇りますから、更年期は折り返し地点に過ぎません。この先まだ40年、50年と人生は続きます。しかも仕事や社会参加だけでなく、家庭でも子育てや介護などのストレスを抱えながら、昔の人が経験していない長い人生を生きることになります。そう考えると、手遅れということはまったくありません。

むしろ、今ここでしっかりケアすることによって、残りの人生を健康で幸せに過ごせるようになります。そうすれば日本の女性は単に長寿なだけでなく、世界中の人がまだ経験していない、若々しく健康的で幸せな「新しい老後」を手に入れることができます。そのためにも自分から積極的に動き、知識とスキルを身につける必要があります。

更年期は女性ホルモンの分泌がなくなるまでの大事な準備期間。ここで自分の体を総点検し、更年期以降の長い人生に備えましょう。そして、その経験を子どもや孫にも教えるのです。若いときから自分の健康を守るスキルと知識を身につけられるように、「健康の木」を一緒に育てる手伝いをしてほしいのです。

更年期障害の原因にも!女性の体は女性ホルモンの分泌量で変化する

ライフステージによって、女性の健康上の注意点やなりやすい病気は変わります。

女性が健康で幸せに暮らすには、自分の体を守っている女性ホルモンについてもっと理解し、使いこなすことが大切です。

女性ホルモンが女性の心と体にどう影響し、どれほどすぐれた力をもっているのか、よくわかっていない人がとても多いのです。わからないままでは更年期障害のさまざまな不調に悩まされ、苦しむ一方です。また、更年期障害の症状が特にない人でも、「自分は大丈夫」とタカをくくってはいけません。

閉経の前後5年を指す更年期は、女性の体が大きく変わる転換期です。更年期の症状の有無は関係なく、体そのものがガラッと変わります。代謝が低下して太りやすくなるのもその一例ですし、コレステロール値の上昇や骨粗しょう症が進むのも同様です。脳卒中や糖尿病など、自分の家系に多い病気にかかる人も増えてきます。これまで女性ホルモンでしっかり守られていた部分がほころび、自分の体の弱点がさらけ出されるのです。

こうした変化が起こることを知り、備えるには女性ホルモンについて学び、理解する必要があります。それによって自分でさまざまな方法を選択できるようになります。

その選択肢の一つとして、ホルモン補充療法(HRT)や低用量ピル(OC/LEP)は更年期世代の心強い味方となります。しかし、ここでも問題があります。日本ではまだホルモン療法への誤解と偏見が多く、更年期の治療として根づいていないのです。つまり、治療法一つとっても学びが必要なのです。

女性が健康で幸せに生きるには、女性ホルモンを使いこなしてこそ実現します。女性ホルモンについて正しく理解し、自分自身の手で自分の心と体を良好な状態に導いていくには、今がチャンスです。

※この記事は2018年7月の記事を再編集をして掲載しています。

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