自分で治す&防ぐ!下肢静脈瘤・2

下肢静脈瘤を自分で治す&予防できる5つの簡単体操

岩井武尚さん
監修者
慶友会つくば血管センター長
岩井武尚

公開日:2019.04.15

更新日:2023.04.14

むくみやだるさが解消!下肢静脈瘤におすすめの体操

下肢静脈瘤の症状は、長時間立ち続ける、あるいは座り続ける生活をしている人に起こりやすいことがわかっています。

「立っているときや座っているとき、脚は重力の影響を受けて血液が心臓に戻りにくい状態が続きます。そのため脚の静脈に血がたまりやすくなるのです」と岩井さん。

そこで効果的なのが、「寝ながら」行う体操(体操1、2参照)です。重力の影響を受けずに、脚を前後や左右、上下に動かして、静脈血の流れを促しましょう。さらに、寝ながら腹式呼吸することも有効です(体操3参照)。

「大きく息を吸って吐いて、横隔膜を上げ下げすることがポンプの働きとなり、静脈血が心臓に戻るのを助けます。スマホを見たり、パソコンをしたり、現代人は何かと前かがみになって息が浅くなりがちです。日頃から深い呼吸を心がけましょう」(岩井さん)

もう一つ、重力に逆らって心臓に血液を戻すために、重要な役割を果たしているのが、脚の「筋肉」です。

「ふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋が動くと、ポンプのような働きをして血液を上へ押し上げます。これを『筋ポンプ』と呼びます」と岩井さん。かかとを上げるストレッチ(体操4参照)の他、日常的に階段を使ったり、ときどき屈伸したりすることで筋ポンプを活性化できます。

また下肢静脈瘤が起こる表在静脈は、皮膚のすぐ下を流れているので、手のひらで優しくマッサージするのも効果的です(体操5参照)。

岩井さんは、「どれか一つでも毎日続けることが大切。脚のむくみやだるさも解消しますよ」とアドバイスします。

監修者プロフィール:血管外科医・岩井武尚さん(慶友会つくば血管センター長)

岩井武尚さん(慶友会つくば血管センター長)

いわい・たけひさ 1942(昭和17)年生まれ。東京医科歯科大学卒業後、73年から米国留学。帰国後、東京医科歯科大学外科教授、血管外科診療科長、同大大学院教授を経て退職。2007年から現職・慶友会つくば血管センター長に。
著書に『下肢静脈瘤・むくみは自分で治せる』(学研プラス・刊)、『自分で治す! 下肢静脈瘤』(洋泉社・刊)など。

下肢静脈瘤予防体操1:あおむけ姿勢で足首ぶらぶら体操

重力の影響が少なく、血液が心臓へ戻りやすいあおむけ姿勢。この状態で足首を動かすことで、さらに静脈血の戻りを促しましょう。


 

下肢静脈瘤体操1|寝ながら、足首ぶらぶら体操

1. あおむけになる
あおむけになりリラックスする。脚は肩幅程度に広げて伸ばし、両手は自然に体の横に置く。
 

下肢静脈瘤体操1|寝ながら、足首ぶらぶら体操

2. 足首を前後に動かす
左右のつま先をできるだけ大きいふり幅で前後にゆっくり10回動かす。両足一緒でも、片足ずつでもOK。ふくらはぎの筋肉が動くのを意識する。座って行っても効果あり。
 

下肢静脈瘤体操1|寝ながら、足首ぶらぶら体操

3. 足首を左右に動かす
左右のかかとを床につけたまま、つま先を左右にゆっくり10回動かす。股関節を使って足全体を動かすようなイメージで。

 

下肢静脈瘤予防体操2:血管の負担軽減!手脚ぷるぷる体操

両手脚を細かく動かすことで、毛細血管の負担を軽減しながら心臓への血液の戻りを促します。

下肢静脈瘤体操2|寝ながら手脚ぷるぷる体操

1. あおむけになり両手脚を上げる
あおむけになり、両手脚を天井に向けて真上に上げた状態を5秒間キープ。手脚はなるべく床に対して垂直になるように。
 

下肢静脈瘤体操2|寝ながら手脚ぷるぷる体操

2. 両手脚を小刻みに揺らす
1の姿勢から、手脚の力を抜いてリラックスさせた状態で30秒間、ぷるぷると小刻みに揺らしたら、脱力してあおむけになり小休止。これを3回繰り返す。両手脚を同時に上げるのがつらいときは、脚だけ、手だけなど分けて行ってもいい。

下肢静脈瘤予防体操3:横隔膜を動かすリラックス腹式呼吸

空気を深く吸い込むと、肺が広がり、横隔膜が下がります。すると内圧が下がるので、血液が心臓の方に引き上げられます。

下肢静脈瘤体操3|寝ながら リラックス腹式呼吸

1.あおむけになり軽く両手を組む
あおむけになり、足を肩幅に開き、両手をおなかの上で軽く組む。
 

下肢静脈瘤体操3|寝ながら リラックス腹式呼吸

2.息を長めに吐きながらゆっくり呼吸
1分間に7~8回のイメージで、ゆったり5分ほど呼吸をする。吐く息が長くなるように意識を。慣れてきたら、吸った後に5秒ほど息を止め、呼吸を1分間に4~5回に減らしていく。

Point おなかの上に組んだ手を置き、息を吐いたときへこみ、吸ったとき上がるのを確認すること。

下肢静脈瘤予防体操4:血流促進!かかと上げストレッチ

静脈の血流促進に欠かせないふくらはぎの「筋ポンプ」と、血流を促してくれる足首を同時に動かすストレッチです。

1.いすの背などにつかまり、かかとを少し浮かせる
いすの背もたれなどにつかまり、足を肩幅に開いて立つ。両足のかかとをほんの少し浮かせる。

2. 3秒ずつかけて、かかとを上げ下げ
3秒数えながら、背伸びをする要領でゆっくりかかとを上げる。次に3秒数えながら、床につくぎりぎりの位置までゆっくりかかとを下ろす。これを20回程繰り返す。

Point ぎりぎり床につかない程度にかかとを浮かせた状態をキープすることで、ふくらはぎの筋肉が常に使われるので、血流がアップします。

下肢静脈瘤予防体操5:リンパを改善血流促進マッサージ

心臓に向かって脚をさすり上げるマッサージで脚の血流を促進。むくみの原因となるリンパの滞りも改善します。

1. そけい部とひざ裏を優しくさする
いすに浅く腰掛けて、リンパ節が集まっているそけい部とひざ裏を4本の指で優しくさする。それぞれ10秒ずつ。


2.一方の脚を上げて足首に手を添え、太ももへ一息で動かす
一方の脚を無理のない範囲で上げ、足首に両手の手のひらをぴたりと添える。両手を、そけい部に向かって一息で、脚をさすりながら移動させる。ひざを曲げて行ってもOK。3~5分間、繰り返したら反対の脚も同様に行う。

Point  力を入れ過ぎず、皮膚の下にたまっている水分を手のひらで優しくすくい上げるイメージで。

次回は、下肢静脈瘤の原因になる生活習慣、病院での治療法についてお伝えします。

取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、イラストレーション=もりあやこ

※この記事は、「ハルメク」2018年3月号健康特集「自分で防ぐ&治す『下肢静脈瘤』」を再編集しています。


【特集】放置しない!下肢静脈瘤を自分で治す&防ぐ

放置しない!下肢静脈瘤を自分で治す&防ぐ

  1. 50代以上の約6割!下肢静脈瘤になりやすい人とは?
  2. 2つの体操と片足2分のマッサージで下肢静脈瘤を改善
  3. 下肢静脈瘤の症状を改善・予防する5つの生活習慣
  4. 医師が解説!「下肢静脈瘤」保険適用の2種類の治療法

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