
今、レンズを薄いカラーにするのがおしゃれ
50代女性の紫外線対策は、メガネのレンズを「カラーレンズ」にするのがおすすめ!おしゃれ&機能的に、カラーレンズを選ぶコツを紹介します。
公開日:2025年05月09日
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第10期第1回
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。第10期が始まりました。1回目のテーマは「アップル」。大井洋子さんの作品「ささやかな目標」と山本さんの講評です。
昔、実家にポポーという木がありました。
当時人気の苗木を取り寄せて、父が前庭に植えたものです。
ポポーの実はアケビに似た形をしていて、緑色の皮が秋には黒ずんで自然落下、柔らかくなったときが食べ頃でした。
果肉は、バナナを潰したようにねっとりして少し甘いのですが、独特の青臭い匂いとエグ味があります。
正直に言うと、特別美味しかったとは思えません。
ほとんど誰も食べないから、地面に落ちたまま発酵し甘酸っぱい匂いを放っていました。ポポーを好んだのは、ときおり訪れる呉服屋の西野さんだけだったのです。
それでいて、遠方に嫁いでから久しぶりに帰省したとき、台風でポポーが根こそぎ倒れ、切られてしまったことを聞いて、わたしは少なからずショックを受けました。
思い出の中では、ポポーの木の下に、祖母が手入れをしたピンク色の風蝶草やグラジオラス、赤いダリア、鳳仙花などが咲き誇っています。
その周りでは祖父母が育てた夏野菜が実り、添え木の先には、シオカラトンボが。
秋仕舞いを終え平らに戻った庭で、村の子たちと鬼ごっこや缶蹴りをして走り回った日。
庭の角には、稲掛け用の竹や丸太棒をしまってある小屋の軒先に、冬支度の漬物用大根が吊るしてあります。
脳裏の映像の中心にあったポポーの木が、本当に無くなっていました。
その様子を目の前にしたとき、木があったときの温かな思い出が完全に過去のものになり、その記憶さえ遠のいてしまう気がして、心にぽっかり穴があいたようでした。
近頃、ポポー人気が再燃していると新聞に載りました。
ポポーは北米原産で、英語でカスタードアップルと呼ばれていると知り、黄色でクリーミーな食感は、いかにもカスタードクリームだと納得しましたが、あの匂いとエグ味のある味が「アップル」と結びつきません。
あれからかなりの年月が経ち、品種改良されて甘みが増し、カスタードアップルという名前にふさわしい味になったかも知れません。
ぜひ、もう一度食べてその味を確かめたいという、ささやかな目標ができました。
ポポーを見てみたい、食べてみたい、と思いました。
大井洋子さんは、ポポーを宣伝するようなことはひとつも書いていません。坦坦と自らの記憶を調べています。この労作、見習いたいと思います。
ポポーというものを描き、伝えるにはどうしたらいいか。
めずらしい植物なんですよー、と書いたところで何も伝わりません。書き手は、描きたい対象から少し離れてよく見ることです。冷静に、あたたかく。皆さん、よく読んで参考にしてくださいね。
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は講座の受講期間の半年間、毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。
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