1話10分で教養が身につく動画講座~西洋音楽史~

ドビュッシーの音楽はなぜキラキラしているのか?

公開日:2021/02/22

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玉川大学芸術学部教授の野本由紀夫さんが、ヴィヴァルディからマーラーまでの西洋音楽史を1話10分、ピアノを演奏しながら楽しく伝える講座です。最終回は20世紀の多様化した音楽について。現代で大人気のドビュッシーとマーラーが影響を受けたものとは?

ドビュッシーの音楽はなぜキラキラしているのか?
ドビュッシーの音楽はなぜキラキラしているのか?

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脂っこいワーグナーの影響を乗り越えるドビュッシー

脂っこいワーグナーの影響を乗り越えるドビュッシー

前回は交響詩の形成についてお話しました。ワーグナー「トリスタン」の和音などに非常に影響を受けて、ドビュッシーが登場します。

ワーグナーはドイツ人で、ドビュッシーはフランス人ですが、彼はワーグナーの音楽に一時期、ほんとに熱狂してしまったんですね。「トリスタン」のような、今までの和音の規則に縛られない音楽もいいんじゃないかということに気が付いていきます。

しかし、やがてドビュッシーはワーグナーから卒業していきます。ワーグナーの音楽は非常に脂っこくて、例えればバター1本の上にステーキをのっけて食べてるぐらい、すごく濃い肉食系の音楽という感じがします。

ドビュッシーは、それに比べれば非常にあっさりした音楽をつくるようになっていくわけですが、そのときにもワーグナーの影響はあって、それを乗り越えていくことになります。

ドビュッシーは東アジアの音楽に衝撃を受けた

ドビュッシーは東アジアの音楽に衝撃を受けた

ドビュッシーがもう一つ影響を受けたのは、東アジアの音楽です。とりわけインドネシアのガムラン音楽にびっくりしました。というのは、パリでは万国博覧会が頻繁に行われ、今までヨーロッパに暮らしていた人々が他のいろいろな異文化を知ることになります。そんななかでガムランの音楽をドビュッシーは聴いて、衝撃を受けたんです。

つまり、「西洋音楽の規則に則らない音楽って、世界にはあるんだ」と、そこで初めて衝撃を受けた彼は、西洋音楽じゃないような感じで、規則に縛られない音楽をどんどん作っていこうと考えたんですね。

ヨーロッパの音楽は、それこそグレゴリオ聖歌以来、メロディがないと音楽にならないというふうに思われてきたんですけれども、ドビュッシーは、メロディなんて発展させなくてもいいと考えます。メロディを発展させるのはベートーヴェンが得意だったことですが、そういうドイツ音楽的なものでなくていい。

断片がいっぱいキラキラ集まってできる、しかも今までの音楽の形式は関係ないような音楽を作ろうとしたのが、ドビュッシーだったんです。そしてまた、西洋音楽の流れが変わっていきました。

とりわけモーツァルトやベートーヴェン以来、ドイツ、オーストリア、ウィーンの系列として発展してきた音楽に、そこからはフランスという全然違う系統の音楽ができます。さらに次はアメリカというものが出てきます。ジャズですね。その結果、多様化していく時代が20世紀に起きてくるんです。

それまでは、「ベートーヴェンが最高!」という価値の一元化した時代だったんですが、20世紀になってくると、「いや、別にそうじゃないのもいいんじゃない」というふうに多様化していく。その一人がドビュッシーだったというふうに言えるのではないでしょうか。

その動きを受けて、20世紀の音楽にはストラヴィンスキーなど、いろいろな人が出現して、多様な流れをつくっていきました。

「標題音楽派」の末裔、マーラーの人気の理由は?

「標題音楽派」の末裔、マーラーの人気の理由は?

もう一つ、交響曲の流れでいうと、オーケストラで最近人気なのがマーラーですとか、ブルックナーですとか、あのあたりの19世紀後半の人たちです。

マーラーという人は、実は「標題音楽派」の末裔のような感じなんですね。それこそワーグナーの影響がすごく大きくて、最初の頃に書いていたのは、やっぱり交響詩だったわけです。ベートーヴェンの影響と思われますけれども、やっぱり交響曲に歌を取り入れていきます。その究極の姿といってもいいのが、やっぱりマーラーでしょうね。

彼の交響曲は、10曲と言うべきか11曲と言うべきか迷いますが、今ではオーケストラの演奏会では、マーラーを取り上げるとお客さんが入るというほど人気の作曲家になっています。しかし、マーラーも生きていたときは、それほど恵まれなかったんですね。「いずれ私の時代がやって来る」と言って亡くなっていきます。その後7、80年経つと、とうとうマーラーは本当にクラシックの音楽として定着いたしました。

では、クラシック音楽的にマーラーの音楽を分析すると、どういう意味があるのでしょうか。

マーラーという人は、本職はウィーン・フィルとかの指揮者だったので、作曲は夏休みにしかすることができませんでした。歌曲もいっぱい書いていますが、交響曲にも力を入れていました。

マーラーの交響曲がなぜ人気になったのかということとも関係するんですけれども、しばしば、マーラーの交響曲には、とにかく人間の持つ感情のすべてが込められている、と言われます。だから、絶対に誰もが、曲のどこかに共感する部分があるはずだという。人間の悲しみ、苦しみ、喜びと、とにかくすべての人類が感じる感情が入っている。そういう音楽というのは、それまでなかなかなかったわけですね。

そういう意味で画期的でもあるし、さらにオーケストラの編成もすごいです。第八番の交響曲は「千人の交響曲」といわれていますが、それは初演したときに1000人ちょっとの人数が必要だったからなんです。巨大オーケストラに加え、巨大合唱団が2セットぐらい必要で、独唱者も必要で、さらには巨大オルガンも必要。考えうる限り、使えるものはとにかく何でも全部入れちゃえ、みたいな超巨大編成のオーケストラを作り上げた点でも、マーラーは重要な人ですね。

ハイドンが作ったオーケストラの編成が、そこまで大きくなり、ハイドンの頃は、少なければ20人ぐらいだったのが、とうとう1000人か、というほど。実際のオーケストラは146人ぐらいだったらしいですけど、150人ぐらいにまで拡大していったということなんですね。


1話10分で教養が身につく動画講座「ピアノでたどる西洋美術」シリーズは、最終回です。

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