1話10分で教養が身につく動画講座~西洋音楽史~

ベートーヴェンのパクリ上等!ブラームスの作曲法

公開日:2021/01/11

更新日:2021/01/12

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玉川大学芸術学部教授の野本由紀夫さんが、ヴィヴァルディからマーラーまでの西洋音楽史を1話10分、ピアノを演奏しながら楽しく伝える講座です。今回は、ベートーヴェンの意思を”パクリ”と言われるほど引き継いだブラームスについて語ります。

ベートーヴェンのパクリ上等!ブラームスの作曲法
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「ドイツ三大B」はブラームスの売り込み文句?

前回までは、ベートーヴェンによって音楽に革命が起きたお話をしました。今回からは、ベートーヴェンの後に音楽がどうなっていくかというお話しをします。

ベートーヴェン以後の作曲家の人たちを「ロマン派」と呼びますが、その流れはほぼ19世紀いっぱい続いていきます。実は19世紀のロマン派の人たちは、ベートーヴェンの第5番を最高のモデルにするか、第6番をモデルにするかで、大激論を交わしていったんです。

第5番の交響曲のように、「ジャジャジャジャーン」というリズム1個だけで大交響曲を書いてしまうぐらい、モチーフにこだわって書こうよという人々。言ってみれば、非常に抽象的で、やや理屈っぽく、構築性の高い音楽を作っていくべきだといった人たちのことを「絶対音楽派」と呼びます。その代表だった人が、ブラームスなんです。

かつてはよく「ドイツ三大B」と言われたものです。ドイツ生まれのドイツ人でありながら、みんな苗字にBが付く。バッハ、ベートーヴェン、そしてブラームス。これ、実は当時のキャッチコピーだったんですね。

ブラームスの当時のキャッチコピー、つまりブラームスを売り込むためのキャッチコピーとしてつくられたのが「三大B」なんです。

今日のキャッチコピーと同じで、「えっ、バッハ? ドイツ民族の英雄じゃないの。ベートーヴェン? 音楽の神様じゃないの。ブラームスもBが付く、すごい!」というふうに、ちょっと、だまされるような感じで、キャッチコピーとして作られたんです。どっちにしても、そういうキャッチコピーができるのは、ブラームスがベートーヴェンの音楽の歴史を継ごうとした人だったからこそなんですね。

ベートーヴェンを意識しすぎたブラームス

ベートーヴェンを意識しすぎたブラームス

ブラームスが第1番交響曲を書くのに相当時間をかけたのは、かなりベートーヴェンを意識しすぎてしまったからというのも、有名な話です。

ブラームスは40歳を過ぎてから交響曲を書き始めるんですが、それがいかに遅いかと言うと、天才モーツァルトは、35歳で亡くなりましたが、第1番の交響曲を書いたのが8歳なんですね。モーツァルトの8歳も、まあ、けしからん感じもしますけれども……。

ベートーヴェンも30歳ぐらいのころにすでに書いて、それでも当時は遅いと言われました。ブラームスはそれよりも全然遅い。40歳というと、普通は熟練の作曲家という扱いになりそうですが。

そこまでブラームスが交響曲を書けなかったのは、やっぱりベートーヴェンという存在があまりにも大きすぎて、そこに到達するのは大変。ましてや、それを乗り越えていかないといけないというのは大変じゃないかということで、なかなか書けなかったんですね。こういう感じの曲です。

非常に壮大な感じで始まる交響曲です。ド・ミ(フラット)・ソの調で書かれているんですが、ブラームスの第1番の交響曲もハ短調で、リズムも「運命」のリズムです。

さらに、これは前回言わなかったので補っておきますと、ベートーヴェンはハイドンが決めたオーケストラの中にちょっと楽器を加えたんですね。何が重要かというと、トロンボーンを入れたんです。

トロンボーンという楽器、実は教会で使う楽器なので、大衆のステージで使う楽器ではなかったんです。ところが音量を増加するにはこの楽器を入れちゃえというので、第5番の交響曲から使い始めたんですね。

第5番はハ短調の交響曲、「ジャジャジャジャーン」のリズムで、トロンボーンを最後の楽章に入れる。ブラームスの第1交響曲もハ短調の曲で「ジャジャジャジャーン」も使い、最後の楽章でトロンボーンが出てくる。もう完全に丸かぶりの曲なんですが、いかにベートーヴェンの第5番の交響曲を意識していたかという表れではないかと思います。

「第4楽章」の一番有名なメロディも「第九」のパクリ?

しかも、第4楽章の一番有名なメロディが、当時から「第九(交響曲第9番)」のパクリじゃないかといわれていたそうですね。本人は「いや、そうじゃない」といっていたそうです。

「チャンチャチャチャンチャ」というのが、第九交響曲のパクリではないかというふうに言われていた。恐らくこれ、「ジャジャジャジャーン」を取り入れているのと同じで、ブラームスは、わざと似せたんだと思いますね。そうすることで、ブラームスの第1番の交響曲は、「ベートーヴェンの第10である」というふうに言われたんですね。

つまり、ベートーヴェンの交響曲は第九までですが、ベートーヴェンの正統的な後継者として、第九に続く第10番を書く人がやっと出てきたというふうに。これも「ドイツ三大B」と同じくキャッチコピーなんですけれども、「ベートーヴェンの十番が、やっと現れた」というふうに言われました。

ある意味では、ブラームスはベートーヴェンの絶対音楽のラインを継承したということなんです。

次回は、ベルリオーズとワーグナーについて語ります。


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