雪の奥入瀬とストーブ列車・冬の青森旅(前編)

雪の青森旅!銀世界の奥入瀬とあったかご当地グルメ

公開日:2019.02.15

大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、食べて食べて、また食べる鉄道旅の楽しさをご紹介します。今回の旅先は青森。冬だからこそ楽しめる景色、青森じゃないと味わえないグルメを詰め込んだ1泊2日旅が始まります!

雪が見たくなったら、はやぶさに乗ろう

雪が見たくて青森に行くことにしました。

後から思い出しましたが、数年前に青森を訪れた際も、雪の降り積もる最中でした。私が生まれたのは1月末の雪の深い時期。記憶の片隅に何か残っているのかもしれません。

青い森鉄道。車両の顔には雪がびっしり
青い森鉄道。車両の顔には雪がびっしり

東京から朝イチの東北新幹線・はやぶさで一気に北上します。

まず目指すのは八戸駅。新幹線でうとうとして目が覚めたら、辺りはすでに真っ白でした。八戸駅から青い森鉄道に乗り換えて、三沢駅で下車。ちなみに八戸から三沢とは反対方面の青い森鉄道に乗ると、私が生まれた三戸があります。

レトロな光景は3月10日まで! とうてつ駅そば

十和田観光電鉄線の旧三沢駅だった駅舎
十和田観光電鉄線の旧三沢駅だった駅舎

青い森鉄道・三沢駅を出てすぐに、2012年4月に廃線となった鉄道路線・十和田観光電鉄線(とうてつ)の旧三沢駅の建物があります。今はバスの待合所として使われています。

レトロな建物内
レトロな建物内

建物に入るとなんだか懐かしい光景が。レトロなのは当然、昭和39年に建てられた駅舎です。そしてここに、駅舎が出来た当初から営業を開始し、とうてつが廃線になった後も連日賑わう「とうてつ駅そば」の三沢駅食堂があるのです

手際よくおそばを茹でる
手際よくおそばを茹でる

入り口横の券売機で「天ぷらそば」の食券を買い、店員さんに渡すとチャチャッと麺を茹でて天ぷらを乗せて出してくれます。実はここでの駅そばの営業は、2019年3月10日で終了。残念ながら、それ以降にこの建物自体が取り壊されることになっています。

とうてつ駅そばの天ぷらそば
とうてつ駅そばの天ぷらそば

天ぷらはまるでそばつゆに溶けるかのように、ふわっふわ。ネギはたっぷり。さっぱりとしたつゆに絡んだそばが、ツルツルと体に入ります。

駅そばは雪の中、列車やバスを待っている間に食べられる大変ありがたい存在。3月11日以降は仮店舗に移転、その後工事中の三沢駅のターミナルが完成したら、新駅ビル内に入るとのことでした。店員さん達もお店について行かれるようです。

駅舎に続くホーム跡
駅舎に続くホーム跡

カウンター上の「キャラメル10円」と書かれた箱が目につき、1個買って「ごちそうさま」と言いつつ外に出ました。

バス停は駅舎の目の前。廃線になった十和田観光電鉄線(三沢駅〜十和田市駅)の代わりに走っている鉄道代替バスで、「十和田市中央バス停」に向かいます。5分ほど遅れたバスに乗車しながら舐めたキャラメルも、なんだか懐かしい味がしました。

青森といえばりんご。そして、奥入瀬渓流

司 バラ焼き大衆食堂の十和田バラ焼きと青森りんごサワー
司 バラ焼き大衆食堂の十和田バラ焼きと青森りんごサワー

バス停に到着後、今度はまだ食べたことがなかった十和田市のソウルフード「十和田バラ焼き」のお店へ。特製タレを絡めた牛バラ肉と玉ねぎを、鉄板の上でタレがなくなるまで炒めて食べます。こちらも寒い冬にぴったりの食べ物。おそばを食べたばかりなので、セットでなく単品を頼みました。

他、「青森りんごサワー」が気になって注文。サワーに使うりんごジュースは5種類あり、好きな物を選べます。しかも出てきたジョッキには、氷の代わりに凍ったりんごが! サワーが薄まらず、後でりんごを食べることもできます。こういう工夫に感心します。

ツアーバスで冬の奥入瀬ネイチャーガイドツアーに参加
ツアーバスで冬の奥入瀬ネイチャーガイドツアーに参加

さて、これから十和田電鉄観光社の「奥入瀬渓流ネイチャーガイドツアー」に参加です。昼間のツアーは2019年は3月17日まで催行。奥入瀬渓流は20年くらい前に、やはりバスツアーで来たことがありました。しかし冬は初めて。ガイドさんの説明を聞きながら雪の森の中を走るのも、なかなか魅力的です。

「三乱の流れ」は3つの渓流が合流する地点。冬は水量が少ない
「三乱の流れ」は3つの渓流が合流する地点。冬は水量が少ない

前日は大雪だったそうですが、今日は一転して晴れ。奥入瀬はそういう日が一番美しいそうです。相変わらずお天気には恵まれています。それにしても雪がきれいです。

滝がそのまま凍った氷柱
滝がそのまま凍った氷柱

奥入瀬渓流には約14本の滝が存在しているそう。そのうち一番大きいものがこちらです。流れる滝がそのまま凍ってしまった不思議な状態。自然の力を感じます。氷柱がライトアップされた、夜出発のナイトツアーもあります。

十和田湖は山手線の内側とほぼ同じ面積
十和田湖は山手線の内側とほぼ同じ面積

バスは十和田湖まで行き、そこから元来た道を戻ります。帰りの道すがら、ガイドさんが更に左右にある氷柱の場所を教えてくれます。真っ白な景色の中で白いものを探すので、私には見つけられないものもありました。

十和田市現代美術館で、アートを体感

十和田市現代美術館入り口付近。左/チェ・ジョンファ フラワー・ホース 右・ポール・モリソン オクリ
十和田市現代美術館入り口付近。
(左)チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》(右)ポール・モリソン 《オクリア》

「十和田市中央バス停」の一つ前、「十和田市現代美術館」で下車します。

こちらの美術館は常に最先端のアートを発信し、来館者に驚きの体験をしてもらう、というのがコンセプトの体験型美術館です。

十和田市現代美術館入り口付近。 左/チェ・ジョンファ フラワー・ホース 右・ポール・モリソン オクリア
(左)ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》
(右)​​​トマス・サラセーノ《オン・クラウズ(エア-ポート-シティ)》

常設展示は、この美術館が建てられる際、それぞれの作品を空間でどう生かすか計算して、個々の展示室が作られています。体験型美術館だけあって、作品の中に入ることができたり、触ったりできるものも多く、たいていの場所で写真が撮れるのもうれしいです。

アナ・エウラ・アラエズ 光の橋
アナ・ラウラ・アラエズ《光の橋》

展示室はそれぞれ独立し、つなぐ廊下はガラスになっていて、常に外が見えます。壁一面がガラスになっている部分も多く、外からも中が見えます。街に向かってアートを展示しているかのような開放的な作りです。

草間彌生 愛はとこしえ十和田でうたう
草間彌生《愛はとこしえ十和田でうたう》

実は道路を挟んだ、向かい側のアート広場にも作品が展示されています。こちらは無料で見られます。子供達に小さいうちからアートに触れて欲しい、街の方達にも身近にアートを感じてほしい、という趣向のよう。ちょっとうらやましい環境です。

今宵のご馳走は郷土料理とシードル。温泉も♪

郷土料理の「ホタテ貝焼みそ」定食と「けの汁」
郷土料理の「ホタテ貝焼みそ」定食と「けの汁」

美術館に満足し、再び「十和田市中央バス停」からバスに乗車、青森駅へ向かいます。今日は青森で宿泊です。バスには2時間強乗っていたので、すっかり寝入ってしまいました。

夕食は「お食事処おさない」。ここはいつも観光客で賑わっています。ホタテ貝焼みそ定食は、たくさんの新鮮な活ホタテ貝を卵でとじたもの。上にウニも乗っています。結構味が濃いのでビールが欲しくなりましたが、今は我慢。けの汁は刻んだ野菜を昆布だしで煮た汁物で、やはり郷土料理だそうです。

A-FACTORYと青森ベイブリッジ、周りにはダルマ型の紙灯篭
A-FACTORYと青森ベイブリッジ、周りにはダルマ型の紙灯篭

駅のすぐ右手に見える「A-FACTORY」という夜20時まで営業している商業施設に向かいます。青森に来ると、こちらのブランドの「アオモリシードル」が飲みたくなるのです。なんとこの施設内で作られています。他にも気の利いたお土産がたくさんあるので、ここは見ているだけでも楽しいです。

(左)アオモリシードルは3種類ある・(右)青森まちなかおんせんは駅から徒歩8分
(左)アオモリシードルは3種類ある (右)「青森まちなかおんせん」は駅から徒歩8分

買ったものをホテルに置いて、まずは温泉へ。青森市内で歩いて行ける温泉はなかなかないのですが、こちらはちゃんとナトリウム-塩化物泉の天然温泉。露天風呂もあります。体を温め、ホテルに戻って先ほどのシードルを湯上がりに飲んでから休みました。

 

1日めのルートはこちら!
1日めのルートはこちら!


今日は新幹線以外はほぼバスでしたが、十和田観光電鉄線(とうてつ)という路線がまだあったら……と想像しながら地図を見ていただけると幸いです。鉄道は人が乗らなくなったらなくなります。それを意識しながら鉄道旅をしていきたいと思います。

次回は、「雪の奥入瀬とストーブ列車・冬の青森旅(後編)」

太宰治のゆかりの地を巡る旅

☆本記事に記載されている写真や本文の無断使用・ 無断転載を禁じます。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。

YASCORN

駅弁・駅そばが好きな鉄道好き漫画家&文筆家。温泉ソムリエ。児童誌から鉄道誌まで幅広く活動中。著書に「おんな鉄道ひとり旅」(小学館・プチコミック増刊で連載中)、「メシ鉄!!!」電子書籍1〜3巻(集英社)他。「鉄道漫遊記」を東洋経済オンラインで連載中。HP: yascorn.com

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