1話10分で教養が身につく動画講座~睡眠と体と脳~

理想の睡眠時間は本当に8時間?睡眠のメカニズムとは

公開日:2020/10/12

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名古屋大学の尾崎紀夫教授が、最新の研究結果を元に、体、脳、心の関係を1話10分全6回で解説します。睡眠薬の効果に関わる睡眠のメカニズムはどうなっていいるのでしょうか? そもそも睡眠時間は何時間がベストなのでしょうか?

睡眠のメカニズムとは
睡眠のメカニズムとは

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睡眠と覚醒のメカニズムと薬剤

さまざまな研究により、最近では睡眠系と覚醒系にリズム系というものを加えた3つが、我々の脳にあることがわかってきました。

疲れたら休む「睡眠系」、危険なときに目を覚ます「覚醒系」、さらに「リズム系」の「クロック(体内時計)」があり、夜になると体が眠ります。現在では、睡眠と覚醒のメカニズムとしてこの三つの系が考えられています。

これらに働く薬が、世の中にはたくさん出てきています。薬ではなくても、まずは、疲れたら休む「睡眠系」をブロックして、起こしてくれるのが、皆さんもお飲みになるだろうカフェインです。一方、「睡眠系」を促進するのは、以前から用いられている一部の睡眠薬や、お酒(後で詳しくお話をします)などです。「GABA」という脳内物質の働きを強めるタイプです。

それから、「覚醒系」をブロックする薬剤として、花粉症などでは抗アレルギー剤である抗ヒスタミン薬を服用されることがあると思います。この薬を服用すると眠くなるのは、「覚醒系」に働くヒスタミンの働きを低下させるためです。さらに最近、「オレキシン」というものが筑波大学の柳沢正史教授によって発見されました。オレキシンの作用をブロックすれば、覚醒がブロックされるため眠ることになります。

もう一つ、「リズム系(体内時計)」ですが、これは「メラトニン」という脳内物質が司っています。このリズム系を促進する形で、睡眠に誘導していきます。

このように、われわれの睡眠覚醒のシステムがわかってきたことから、それに対する薬剤も多様に開発されています。

 

睡眠時間は、年齢や季節とともに質と量が変化する

睡眠時間は、年齢や季節とともに質と量が変化する

これは、我々がどのぐらいの時間眠るかを表したグラフです。小さい頃は長く眠り、10時間以上眠っていることもありますが、睡眠時間は年齢とともにどんどん減っていきます。

特に「SWS:Slow Wave Sleep」と書いてある深い睡眠(記憶の整理・定着に非常に重要な睡眠)が減っていきます。これはとても残念ですが、致し方ないところでしょう。

もう一つ。「リズム系」がだんだん悪くなってくるため、ちょっとしたことで夜と昼が逆転したり、夜眠らずに昼間にうとうとするようになります。このようなことが、介護の方にとってはとてもお困りの点です。これをどうするかが、今後の大きな課題であると考えられています。

睡眠時間には、もちろん年齢だけではなく、いろいろな要素が関係します。かつて私が季節と睡眠の調査を日本で行ったときに、7~8月は最も睡眠時間が短い月であるという結果が出ました。だからといって、これは不眠症が夏に生じていると考える必要はなく、季節による変動と捉えてください。また、女性の場合、生理周期に関連して睡眠も変化します。

こういった自然の変化に伴う睡眠の変動に対して薬の力を借りるのは、いささか不自然だろうと思います。

 

8時間睡眠に根拠はない、6~7時間が人間の睡眠時間

6~7時間が人間の睡眠時間

何よりも睡眠と長命の関係については、いろいろ言われてきました。かつてはアメリカ、最近では日本でも、以下のように調査されています。

このグラフは、北海道大学の玉腰暁子先生が2004年に発表している大規模な調査です。男性も女性も、6~7時間のところで最も死亡の危険率が低くなっています。つまり、睡眠時間の長短が問題ではなく、むしろ不眠をどう感じて、日中の活動に影響するかが重要であり、長さではないと思われます。

とはいえ、人間の睡眠はもともとどれぐらいのものなのでしょうか。これは、なかなかわからないのですが、少し前に以下のような研究が報告されています。

この調査は、南アメリカとアフリカの二つの部族で行われました。合計三つの部族で、おのおの別個に調査していますが、どこにおいても6~7時間が彼らの睡眠時間でした。案外なことですが、それほど長く眠らないのが、われわれのもともとの睡眠ということです。8時間睡眠には、実は根拠はないようだということがわかってきたのです。


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