秋こそ運動を始めよう!しなやかに動く体を作る運動習慣
秋こそ運動を始めよう!しなやかに動く体を作る運動習慣
公開日:2025年10月30日
加齢で筋肉は減少!? 怖い病気のリスクも
40~50代は、筋肉量の維持に目を向けたい大切な時期です。
アンチエイジングに詳しい満尾さんによると、筋肉は20~30代をピークに徐々に減少し、40歳以降は年間0.5~1%の速度で減っていくのだそう。
「筋肉量が減ると基礎代謝が下がって太りやすくなり、糖尿病など生活習慣病のリスクが高まります。また、筋肉には骨や関節を支える役割があるため、下肢筋力の低下は転倒や骨折にもつながります。さらに、筋肉は血糖の主要な処理場所であるため、減少すると血糖コントロール悪化の要因にもなります」(満尾さん)
私たちがご飯やパンなどの炭水化物を食べると、体の中でブドウ糖(血糖)に分解されます。血糖は体のエネルギー源になりますが、血液中に多すぎると高血糖状態となり、血管や臓器に悪影響が出ることが知られています。そこで大きな役割を果たすのが筋肉です。
筋肉は血糖を取り込んでエネルギーとして使ったり、ため込んだりできる、いわば“血糖の貯金箱”のような存在。筋肉が少ないと、血糖を受け入れる「入れ物」が小さくなって食後の血糖が下がりにくくなり、血糖値が高い状態が続きやすくなります。これが「血糖コントロールが悪化する」ということです。
「血糖コントロールの悪化は体力や活動性の低下を招き、心身が脆弱になるフレイルや、サルコペニアの発症にも直結します。そのため、筋肉が減りやすい40代以降に筋肉を維持する生活習慣を心掛けることは、健康寿命を延ばす上で極めて重要なのです」(満尾さん)
筋肉を守る第一歩は運動習慣!運動量の目安は?
筋肉量を維持するには、運動が欠かせません。厚生労働省では、生活機能維持のために「息が弾み、汗をかく程度以上」の運動を、週に60分以上行うことを推奨しています。
手軽に始められる運動の一つは「歩くこと」。まずは、1日約8000歩を目指してみましょう。家事などの日常生活の中では、1日約2000歩は歩くと言われているので、ウォーキングなら1日6000歩程度を目標に。1日6000歩が大変な場合は、1日10分でも多く体を動かすことを心掛けて。短い時間の積み重ねが、筋肉量維持につながります。
もちろんウォーキング以外でもOKです。ジョギングや水泳、趣味のスポーツなど、楽しく続けられそうな運動を見つけましょう。
また、週に2~3回の筋トレも、筋肉量維持に効果的です。満尾さんによると、筋トレの強度は「人と会話できるくらい余裕がある状態」が目安。自分の体重で負荷をかける腕立て伏せやスクワット、ダンベル運動などを取り入れてみましょう。
スポーツジムに入会したり、地域の運動教室に参加するのも、専門家のアドバイスがもらえるのでおすすめです。
「筋肉量を維持するには、運動を取り入れると同時に、長時間座り続けないことも大切です。まずはソファに座る時間を減らすよう意識してみてください」(満尾さん)
満尾さんが教えてくれたのは、以下のような「ながら運動」です。
<ながら運動の例>
- テレビを見たり読書をするときは、30分に一度立ち上がって背伸びをする
- テレビのCM中にスクワットをする
- 電話は立って話す
- ガーデニングなど、立って行える趣味を取り入れる
「こうした短時間の積み重ねでも血流や代謝が改善し、フレイルやサルコペニアの予防につながりますよ」(満尾さん)
食事からもアプローチ!筋肉量維持を助ける栄養素を
筋肉量維持の対策では、こうした運動に加えて、食事での対策も大切です。
食事対策でまず意識したいのが、筋肉の材料となるタンパク質の摂取。肉、魚、卵などに含まれる動物性タンパク質と、納豆や豆腐などの大豆製品に含まれる植物性タンパク質をバランスよく組み合わせることで、筋肉が作られやすくなります。
筋肉量維持のために推奨されるタンパク質の摂取量は、1日で体重1kgあたり約1.0g程度です。例えば体重が50kgの人の場合は、1日50g程度のタンパク質を取りたいところ。高齢者(65歳以上)では体重1kgあたり1.0〜1.2gが望ましいとされています。ただし、一度にたくさんのタンパク質を取っても吸収できないので、1食あたり20g程度を目安に、小分けで摂取することをおすすめします。
朝食を抜いてしまう方もいるかもしれませんが、できるかぎり三食をバランスよく取ることも大切です。特に、タンパク質は朝食や昼食で不足しやすいため、朝食を肉、魚、卵、納豆、豆腐などを取り入れるよう意識してみては?間食にゆで卵やチーズ、ヨーグルト、小魚などを取るのも、手軽で簡単な方法です。
また、タンパク質の十分な摂取に加え、筋肉維持を助ける栄養素も積極的に取りたいところ。満尾さんが筋肉維持を助ける栄養素を教えてくれました。
<筋肉量維持に役立つ栄養素>
- ビタミンD(筋肉合成や骨の維持をサポート)……卵、魚(鮭、サンマ、ブリ、しらす干しなど)、きのこ類(干しシイタケなど)に含まれている。日光浴もおすすめ。
- ビタミンC(コラーゲン合成や鉄の吸収を助ける)……野菜(ブロッコリー、赤ピーマン、ほうれん草など)、果物(キウイやかんきつ類)など。
- オメガ3脂肪酸(炎症を抑え、筋肉維持を助ける)……青魚(イワシやサバ、サンマ)、アマニ油など。
なお、筋力の低下を抑えるには、ミツバチ産品のローヤルゼリーも注目です。ローヤルゼリーの飲用によって筋力の低下が抑制されたという報告があり、加齢による筋力の低下を抑える素材として注目が高まっています。
今からでも遅くはありません。運動や食事の対策を始めることが、10年後、20年後もしなやかに動く体につながります。過ごしやすい秋は、運動を始めるのにもぴったりの季節!ずっと元気に動く体を目指して、新習慣をスタートさせましょう。
取材協力:山田養蜂場 健康科学研究所
■監修者プロフィール:満尾正(みつお・ただし)さん

満尾クリニック院長・医学博士。北海道大学医学部卒業。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを開設。日本キレーション協会代表、米国先端医療学会理事、日本抗加齢医学会評議員。「125歳まで元気に生きる(小学館)」「食べる投資(アチーブメント)」など著書多数。






